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2014年9月

2014.09.21

▽福島の真実――『美味しんぼ』110巻

雁屋哲、花咲アキラ『美味しんぼ』110巻(小学館)

漫画『美味しんぼ』の登場人物たちが、2011年11月、2012年5月、同6月と三回にわたって、原発事故で放射性物資がばらまかれた福島県の各地を、取材した記録である。

今年の5月に話題を集めた「被爆と鼻血」のくだりは、本書には、収録されていませんが。

山岡士郎の東西新聞社と、海原雄山の帝都新聞社による共同取材というかたちで、福島市渡利地区、相馬市松川浦漁港、いわき市薄磯、会津の喜多方市、相馬原釜、喜多方市山都町、飯館村、南相馬市小高区、二本松市、伊達市、矢吹町などを訪れ、放射線量を測定し、地元の人の声を聞き、さらに、郷土料理を味わうという構成となっている。

漫画としての誇張はあるとは言え、腰を据えた取材の結果であり、十分に「福島の真実」を伝えられる立派なルポルタージュと言うことができます。

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2014.09.18

▽『偽悪者』――トリックスターたちの転機

上杉隆『偽悪者~トリックスターが日本を変える~』(扶桑社)

本書は、元ジャーナリスト(?)の上杉隆が、『週刊SPA』に連載したインタビューに加筆修正したものである。トリックスターとしての12人の「偽悪者」たちの、生い立ちや人生の転機などをを紹介したものである。

取り上げられた人々の幾人かの転機を紹介すると、

湯浅誠
《学部生の4年間は、ボランティアに明け暮れた。湯浅には障害のある兄がおり、ボランティアが自宅に出入りしていた。幼い湯浅は大学生になったら「恩返ししよう」と決めていたという。大学院に進んだ頃には、野宿者の支援を行うようになったが、支援活動に出掛けた渋谷でこの街に大勢のホームレスがいることを初めて知る。》(p.93)

竹田恒泰
《師事したのは、物理学者の藤田祐幸。スリーマイル島原発事故をきっかけに研究者としての成功に背を向け、立身出世をなげうち、市民とともに生きる在野の科学者として放射能の影響を世に訴え続けてきた人物だ。藤田と出会った竹田は、専門知識を修めるだけでなく、街に飛び出してフィールドワークを重ね、反原発の考えを一層強くしていった。》(p.130)

猪子寿之
《『新・電子立国』が放送された1995年、大学進学を控えた高校3年生の猪子はこれを観てショックを受ける。「このままでは日本の経済は衰退する一方だ……」。東京大学に入学したものの、「デジタル領域が全産業の中心になっていく」のなら、オールドエコノミーに属する大企業に「逆玉の輿」で潜り込んでも、もはや意味がなかった。大学を卒業した2001年3月、猪子は起業の道を選んだ。》(p.184)

[目次]
川上量生
(株式会社ドワンゴ代表取締役会長、スタジオジブリ・プロデューサー“見習い”)
「ネットの未来」とか「Web2・0」とか、偉そうに吹聴するIT業界の人が本当にムカついて……。
徹底的にバカにしてやろうと思った。

坂口恭平
(「新政府総理大臣」、建築家)
小学校のとき、すでに多数決では物事はうまくいかないというシステムの限界と戦っていました。

冨永愛
(モデル、WFP国連世界食糧計画・オフィシャルサポーター、国際協力NGOジョイセフ・アンバサダー)
日本ではアートとジャーナリズムが交わらないよね。

加藤嘉一
(国際コラムニスト、世界経済フォーラムGSC(グローバルシェイパーコミュニティ)メンバー)
無責任に我こそが愛国者と思い込んでいる者を僕は“愛国奴”と呼びます。

湯浅誠
(活動家、NPO法人反貧困ネットワーク事務局長)
「アクティビスト」のほうが当たりがいいのはわかるけど、敢えて「活動家」を名乗っているんです。

細野豪志
(民主党衆議院議員、元原発担当相)
大臣になってとか、総理になってとか……3・11以降、関心がなくなった。
政治家として使い捨てにされてもいいから、今できることをやる。

竹田恒泰
(作家、憲法学者、旧皇族)
私にとっては、左翼よりむしろ“エセ保守”のほうが敵。

ミサオ・レッドウルフ
(社会運動家、イラストレーター、反原発団体「NO NUKES MORE HEARTS」主宰)
当時行った野田首相との面会は、交渉決裂を演出したパフォーマンスでした。

津田大介
(メディア・アクティビスト、ジャーナリスト、インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事)
政治的に言いたいことはあまりない。ただ、子供の頃から政治的な環境と無縁ではなかった。

猪子寿之
(ウルトラテクノロジスト集団・チームラボ代表)
日本のように軍事力も資源もない国では、テクノロジーと文化が競争力の源泉になる。

朝比奈一郎
(青山社中株式会社筆頭代表)
日本の政党に何が足りないのかといえば、政策や人材をつくるシステムに尽きる。

乙武洋匡
(作家、東京都教育委員)
情報が溢れる今、普通の言い方では届かない。
敢て過激な言い方をして、ようやく人が振り向いてくれる。

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2014.09.12

▽朝日新聞の「従軍慰安婦」は史上最悪の大誤報だった!――WiLL

月刊WiLL2014年10月号『朝日新聞の「従軍慰安婦」は史上最悪の大誤報だった!』(ワック出版)

8月5日に朝日新聞が誤報を認めて、一部の記事を撤回した「従軍慰安婦問題」は、社長が引責辞任を表明する事態にいたりました。

この論争の争点は、ずっと前から明らかになっていましたので、さまざまな事態を悪化させた最大の要因は、やはり朝日新聞の決断が遅すぎたことにあると言わざるをえません。

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2014.09.11

▽「テレビが楽しくなくなった」――ロンブー淳

文藝春秋2014年10月号『総力特集:新聞、テレビの断末魔』(文藝春秋)

お笑いコンビ、ロンドンブーツ1号2号の田村淳が、文藝春秋2014年10月号の総力特集『新聞、テレビの断末魔』に「テレビが楽しくなくなった」というタイトルで寄稿している。

テレビ業界の過剰コンプライアンスがテレビをつまらなくしている、という問題意識から、政治に関心を持つようになった、と淳は語っている。その過剰コンプライアンスの一例として、次のようなものをあげている。

《中には、「『ハーフ』は駄目」という番組もありました。何と言い換えればいいかと聞くと、「『混血』と言ってください」。いやいや、ちょっと待て、と。そちらの方が言わないでしょう。「あ、君、混血だもんね」なんて気軽に言えないですよ。》(p.252)

田村淳は、安倍総理の地元である山口県出身であり、昭江夫人とも親しいという。

【ニコニコ動画】田村淳のNewsClab 2009年2月19日 ゲスト「安倍 晋三」

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2014.09.10

▽『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』

マシュー・アムスター=バートン『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』(関根光宏訳、エクスナレッジ)

本書は、『英国一家、ますます日本を食べる』と似たようなタイトルの本ですが、特に関係があるわけではなく、たまたまアメリカのフードライターが書いた本を、『英国一家~』の人気に便乗して翻訳したもののようです。

東京中野で暮らすことになったアメリカ人のフードライターが、ジャンクフードやコンビニの食べ物などの、日常的に日本人が食べているものについて綴っています。

『英国一家~』が、伝統的な和食を中心に扱っているのに対して、本書は、普通の日本人が日々食べているものを取り上げており、両者をあわせて読むと、面白さも増します。

原書"Pretty Good Number One: An American Family Eats Tokyo"は、日本の日常生活を英語で表現するとこうなる、という良い見本になっていまます。Kindle版も買えるようです。

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▽『英国一家、日本を食べる』

マイケル・ブース『英国一家、日本を食べる』(寺西のぶ子訳、亜紀書房)

マイケル・ブース『英国一家、ますます日本を食べる』(寺西のぶ子訳、亜紀書房)

この二冊は、英国人フードジャーナリストであるマイケル・ブース(Michael Booth)と、その一家が、日本の料理を食べ歩く旅行記である。『ますます~』は続編でなく、一冊目を翻訳する際に紙幅の都合で落とした章を、改めて収録したものです。

日本の伝統的な料理について簡潔な説明も加えられており、日本人が読んでも、楽しめる内容となっています。

"Sushi and Beyond: What the Japanese Know About Cooking"

また、原著は、和食や食材を英語でどう表現するかを理解する上で役に立ちます。

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2014.09.07

▽『ナタリーってこうなってたのか』

大山卓也『ナタリーってこうなってたのか』(双葉社)

ナタリーというポップカルチャーのニュースサイトがあります。
http://natalie.mu/

最近、KDDIの傘下に入りました。
http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2014/08/22/603.html

その創設者が運営コンセプトなどを語ったのが、本書です。

ただ、書籍としてまとめられる前に、その他のネットニュースや対談、講演などで紹介されてきたエピソードも多く、本書から、あまり追加情報が得られるわけではありませんが……。

ナタリーの注目すべき点は、その網羅性の高さ。本書からではないのですが、

東京編集キュレーターズ
http://tokyo-edit.net/archives/31069454.html

より、少し引用すると

《実際にはどこにも肩入れしてない。ただ数をたくさん出してるだけなんです。
他のニュースサイトが1日10本から15本記事を出すところ、いまナタリーは
1日50本出してる。そうすると人は自分の好きなことしか目に入らないから、
「ああ、このサイトは自分の好きなジャンルを手厚くやってくれてる、味方なんだ」
っていうふうに幻想を持ってくれるの。》

[目次]
[プロローグ]不思議なサイトになったもんだ
[第1章]ナタリー前夜
ファンだから「もっと知りたい」
とにかく意識は低かった
「批評をしない」音楽サイト
「誰もやっていないなら自分がやるしかない」
「♪ピロリン」で決まった名前
一瞬で生まれた「ナタリー信子」

[第2章]とにかくコツコツやってきた
給料8万円の代表取締役
「ファン目線」が受け入れられた
ポップカルチャーの連峰を目指して
おやつナタリーの顛末
ずっとじわじわ続いている

[第3章]ナタリーがナタリーである理由
ナタリーがナタリーである理由
読者を信じるということ
無色透明でありたい
ナタリーに「載っているべきこと」
みっともないことはしたくない
基礎体力の大切さ
戦争の終わりを告げるニュースキャスター
過剰さを求める理由

[第4章]「やりたいこと」より「やるべきこと」
自分が読みたいインタビュー
「自分」がないのが自分らしい
ぬるいものはダサい
永遠に足りない
ウェブだからこそできること
ドヤ顔だけは見せたくない

[第5章]これからのナタリー
早すぎたチャレンジの数々
「新しさ」の次の価値
自分で見つけることの楽しさ
せっかくだから見てほしい

[特別対談]大山卓也ってこうなってたのか
津田大介×唐木 元

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