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2014年10月

2014.10.30

▽クックパッド社員の名刺の秘密

横川潤『クックパッド社員の名刺の秘密』(講談社)

クックパッド社員の名刺の秘密とは?

それは、「料理のレシピが掲載されている」です。

名刺の裏面には、料理の写真入りの詳細なレシピが、表面の上半分にも同じ料理の写真、社名や部署名や社員名は、表面の下半分に記されています。

《できあがった名刺には思いがけない効果があった。
 クックパッドがレシピの会社だというのが一目瞭然で理解してもらえる。》(p.41)

本書の内容は、ちょっと散漫ですが、クックパッドが楽しい会社であることは伝わってきます。

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▽ヴィクトリア時代の一つの人生、二つの履歴書――『名探偵ホームズとドイル』

川村幹夫『名探偵ホームズとドイル―ヴィクトリア時代の一つの人生、二つの履歴書』(海竜社)

名探偵シャーロック・ホームズと、その生みの親であるコナン・ドイルの人生を、彼らの生きたヴィクトリア朝時代イギリスの社会背景などを踏まえつつ描いた人物伝。

あまり新発見めいたところは無いものの、入門書としては、割とよくまとまっている。

ドイルが生きた時代というのは、1849年から1930年までで、産業革命が起こるなどイギリスがもっとも栄えた時代であった。

ところで、ホームズが相棒となるワトソンと初めて出会ったのは1881年のことであるが、この時ホームズはワトソンがアフガニスタンに出征していたことを言い当てる。ワトソンは第二次アフガン戦争に軍医として従軍していたのだが、アフガニスタン戦争や、クリミア戦争など、この時代から国際情勢の火種となっていたことも良くわかる。

[目次]
第1章 ホームズとドイルが活躍した時代風景
  ―大英帝国の光と影のはざまで
第2章 名探偵ホームズ、彗星のごとく現る
  ―盟友ワトソンとの出会いと華々しい活躍
第3章 ドイル、苦闘の医学生時代
  ―貧乏と家庭崩壊の中で
第4章 ホームズ、一躍スターダムへ
  ―ホームズ物語の大成功
第5章 妻と恋人の間で深まる苦悩の日々
  ―ドイルの「二重生活」の始まり
第6章 作家としての絶頂期と第一次大戦
  ―大英帝国の不滅を信じて
第7章 心霊主義への転向、そして「次なる世界へ」
  ―文豪コナン・ドイルは、次なる世界で生き続ける

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2014.10.28

▽『忠臣蔵はなぜ人気があるのか』

稲田和浩『忠臣蔵はなぜ人気があるのか』(フィギュール彩)

本書から学んだ『忠臣蔵』の基礎知識。

発端となった浅野長矩による、吉良義央に対する刃傷沙汰は実際にあった事件だったが、その原因や詳細は、はっきりしていない。

浅野長矩の切腹、赤穂藩断絶は事実。

赤穂浪士による吉良邸への討ち入り、切腹も事実。

その後、浅野家は下総に再興された。

さまざまなバージョンの『忠臣蔵』がつくられた。

講談では『赤穂義士伝』が代表的作品。

歌舞伎、浄瑠璃では『仮名手本忠臣蔵』が代表的作品。

『忠臣蔵』は忠義の家臣、大石内蔵助の意。

『仮名手本忠臣蔵』は、太平記に時代を移しているので、登場人物の名前も違う。

『仮名手本忠臣蔵』の裏の話として、江戸時代に『東海道四谷怪談』がつくられた。

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▽『ヤクザに死す』

安田雅企『ヤクザに死す』(宝島社文庫)

《私が出会ったヤクザたちは、平組員で最低五人、幹部で十~二十人、組長級だと百人以上の堅気のビジネス・パートナーをもっていた。両者は必要に迫られ、密着していた。私はそうした堅気たち、ヤクザを使って利益を上げている人たちを多数見てきた。》(p.332)

本書は、1992年10月に発行された『正月はヤクザのアパートで』を改題・改訂して、2000年に文庫化されたもののため、内容的には、1992年3月のいわゆる「暴対法」施行前のヤクザ事情について綴られている。

「暴対法」は、2008年、2012年にも強化されているとはいえ、本書に描かれているような事情は、まあ、あまり変わっていないのでしょうね。

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2014.10.27

▽『あかんやつら』――東映京都撮影所血風録

春日太一『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』(文藝春秋)

映画ライターの春日太一が東映京都撮影所を通史的に掘り下げた労作……。

スタジオ、作品、プロデューサー、監督、スタッフ、役者と、焦点がぼやけて、まとまりがなく、散漫になってしまったかなあ、という印象です。

[目次]
小指のない門番

第1部 時代劇黄金期
 東映京都を創った男
 親父に捧げる『赤穂浪士』
 鬼の岡田

第2部 混乱する撮影所
 時代劇の凋落
 集団時代劇の興亡
 岡田茂の改革

第3部 暴力とエロスの都
 任侠映画、快進撃
 女の世界を覗き見る
 『仁義なき戦い』

第4部 必死のサバイバル
 高岩淡所長と映画村
 迷走する大作映画

逆風の中で

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▽『映画の奈落』――北陸代理戦争事件

伊藤彰彦『映画の奈落: 北陸代理戦争事件』(国書刊行会)

『仁義なき戦い』から始まった東映の実録ヤクザ路線も、高田宏治脚本の『北陸代理戦争』で終結せざるを得なかった、その顛末を描いたのが本書である。

映画のモデルになった組長がヒットマンにより射殺されたこと。

そして、『仁義なき戦い』四作の脚本を書いた笠原和夫の後を引き継くかたちで、『仁義なき戦い・完結編』の脚本を担当した高田宏治が、評論家から酷評されたこと。

『北陸代理戦争』の背後に存在した因縁を執拗に描いている。

高田宏治がその後、『鬼龍院花子の生涯』や『極道の妻たち』シリーズでヒットを飛ばしたことなどを考えると、ちょっと因縁の部分を強調し過ぎかなという印象も持ちますね。

[目次]
序章 『北陸代理戦争』
第一章 事件 一九七七年四月十三日
第二章 笠原和夫対高田宏治 企画 一九七六年十月
第三章 両目ができた 取材 一九七六年十一月
第四章 太秦蛸部屋寮 脚本執筆 一九七六年十二月
第五章 性転換手術 脚本改稿/一九七七年一月
第六章 県警対東映京都 撮影/一九七七年一月~二月
第七章 奈落へ向かう人々 封切りと三国事件 一九七七年二月~四月
第八章 暁の7人 復讐 一九七七年四月~十一月
第九章 女が水を血に変えるとき その後の高田と深作
終章 それぞれの三十七年
取材者一覧・引用文献一覧・あとがき・索引(人名・映画題名)

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2014.10.21

▽『世襲議員のからくり』

上杉隆『世襲議員のからくり』(文春新書)

上杉隆の『世襲議員のからくり』――。

2009年の発売当時に読んでいたので、すでに書評も書いたものだと思っていたら、書いていませんでした(笑)。

本書は、2008年9月に福田康夫首相が辞任して、世襲議員の総理が二代続けて一年で辞任するという異常事態が発生する、その直前くらいから『週刊文春』が取材を開始したキャンペーンをまとめたものです。

もちろんいま話題の小渕優子の「世襲のからくり」もバッチリ書かれています。政治資金管理団体を使うと相続税をゼロにできる、というゆゆしき事態が明らかにされていますね。

いまさらですが、さすがのスクープだったといえます。

[目次]
第1章 二世の投げ出しはなぜ続く
第2章 民主党の二世たち
第3章 からくりその1―政治資金管理団体の非課税相続
第4章 からくりその2―後援会組織の世襲
第5章 からくりその3―どんな無理もする「看板の世襲」
第6章 世襲大国日本
第7章 国民の意思が世襲を断ち切る

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2014.10.14

▽26歳の法則――『年齢学序説』

博多大吉『年齢学序説』(幻冬舎よしもと文庫)

お笑いコンビ博多華丸・大吉のつっこみ担当、ラジオパーソナリティー、そして物書きとしても活躍する博多大吉が、2010年に上梓した(追記のある文庫版は2014年)のが本書『年齢学序説』である。

ダウンタウン、とんねるず、そして、ウッチャンナンチャンの3つのお笑いコンビが出世作となる番組を始めたのが、いずれも26歳だった――。

この「26歳の法則」に気がつくところから、大吉の「年齢学」は始まる……。

まあ、「学」というほどの精緻な議論ではないのですが、お笑い芸人やその他の分野の著名人の節目の時期を簡潔に知ることができます。

なにより興味深いのは、博多時代の華丸・大吉コンビの26歳の頃でしょう。

[目次]
26歳の法則―まえがきにかえて
第1章 将来を暗示する26歳
第2章 もうひとつの時限爆弾型
第3章 世界を揺るがす26歳
第4章 挑戦の果実を得る26歳
第5章 音楽と年齢―ヒット曲と26歳
第6章 漫画家と年齢学
第7章 30代からの年齢学
第8章 革新させる38歳―バラエティ番組の考察
第9章 第X次開花時期の考察
第10章 経験としての26歳
結局のところの年齢学―あとがき

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2014.10.13

▽『かつて誰も調べなかった100の謎』――ホリイのずんずん調査

堀井憲一郎『ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎 』(文藝春秋)

1995年4月から2011年6月にかけて『週刊文春』に連載されていた「ホリイのずんずん調査」。792回分の調査の中から100を選んで採録し、さらに解説を加えたのが本書である。

多少おちゃらけたところはあるものの、社会調査の方法としては、割とまともなアプローチであり、意外な発見があったりする。

今回読んでいてビックリしたのは、「寿司を1カンと数えだしたのは、平成に入ってからである」というもの。昔は寿司は「1個、2個」と数えていたにもかかわらず、1990年代に雑誌の「ハナコ」と「ダンチュウ」を中心に「カン」が広まり始め、2003年にはすべての雑誌で使われるようになったという。知らんかった(笑)。

もう一つ面白かった調査は、アマゾンで本を買った時のランキングの変化を調べたもの。一冊買っただけで次のように順位は変動したそうです。

●43万→2万2796位
●14万→1万9140位
●5万9千→1万3535位
●3万2千→9120位
●2274→1707位
●352→323位

このほかにもいろいろと、ああそうなんだと思う調査が載っていますね。

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2014.10.01

▽ペン・シャープナーとは?――『調べる技術・書く技術』

野村進『調べる技術・書く技術』(講談社現代新書)

《いったい何のことかと思われるだろうが、ペン・シャープナーとは、文章のカンを鈍らせないために読む本や、原稿を書く前に読むお気に入りの文章のことだ。》(p.128)

本書『調べる技術・書く技術』は、ノンフィクションライターの野村進が、取材の仕方や執筆の際の心構えを、自分自身の体験や、実際に発表された文章などを例に引きながら解説していく。

著者の教えをそのまま実践できるかはともかくとして、入門書として必要なことは、十分カバーされている。

「ペン・シャープナー」については、ネットが普及して以降、雑な文章や煽るような文句を目にする機会がいっそう増えているだけに、常に優れた文章を読む癖をつける上でも有効なのかな、と思ったりもします。

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