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2014年11月

2014.11.29

▽『<役割語>小辞典』

金水敏『<役割語>小辞典』(研究社)

「役割語」とは?

《話し方と人物像が結びついているとき、その話し方を役割語というわけですが、話し方には語彙、話法、言い回し、イントネーション等の要素がある》(p.vi)

このような視点で、さまざまな「役割語」を収集し、辞書的に配列して解説を加えたものが本書である。

たとえば、「ほほほ・おほほ」は、

《笑い声を表す感動詞。口元を手でおおったりして控えめに軽く笑う笑い方。主として女性の笑い声を表す(<女ことば>)。》(p.170)

もちろん挿絵は、『エースをねらえ!』のお蝶夫人(笑)。

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▽タブーの民俗学手帳――『禁忌習俗事典』

柳田国男『禁忌習俗事典』(河出書房新社)

本書は、柳田国男の全集未収録の記録を復刻するシリーズの一冊で、原著が発行されたのは1938年である。

《我邦では現在イミという一語が、かなり差別の著しい二つ以上の用途に働いている。》(p.2)

本書を読んでいくと、「火に負ける」など、「火」が「忌」の意味で使われているケースが多いことに気づく。

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2014.11.27

▽書店員のリアルな姿――『出版営業百ものがたり』

齋藤一郎『出版営業百ものがたり』(遊友出版)

カリスマ書店員の武勇伝みたいな本は、ちょくちょく見かけますが、本書は、出版社の営業マンの綴ったコラムです。

営業マンとしての本音、他社の営業マンや書店員への共感や不満も、割と率直に綴られていて、なかなか興味く読むことができます。

出版業界紙『新文化』に1994年2月~2005年10月まで連載されたものを、加筆してまとめたもの。一つのコラムが見開き2ページに収められていて、カチッとした文章を味わうこともできますね。

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2014.11.23

▽SNSで農業革命

蓮見よしあき『SNSで農業革命』(碩学舎ビジネス双書)

本書は、2005年に長野県に移住し、自社ブランドのワイン製造に取り組んだ著者が、いかにSNSを活用したかを綴ったものである。

2010年には「はすみふぁーむ」ブランドのワインの販売を開始するとともに、ワイナリーの建設を開始。さらに、この年から始めたツイッターとフェイスブックが、大きな転機をもたらします。

年間1万本ほどのワインを出荷しますが、SNSを通じて、ほぼすべてが販売できているそうです。

著者が、どのようにSNSを活用したかについては、本書に詳しく書かれていますが、最後にホリエモンがしれっと対談に登場しているのは、いかにもビジネス書な感じで、ガッカリ感がありますね(笑)。

[目次]
第1章 なぜ今、農業にSNSが必要なのか
[1]「はすみふぁーむ&ワイナリー」の軌跡
[2]これからの農業に必要な2つのこと
[3]6次産業化+SNSでさらに強い農業へ
column 01 SNSやるならパソコン? それともスマートフォン??

第2章 SNSで広がる農業経営のアイディア
[1]SNSを使うと何ができるのか
[2]ブランディングで商品価値を高める
[3]農業人としてのSNSとの向き合い方
[4]SNSで世界に勝てる農業を
column02 ブランディングに必要なのは経営者の人間的魅力

第3章 実践編I フェイスブック
[1]フェイスブックの使い方と活用方法
[2]応援してくれる人を増やすブランディング法
[4]「いいね! 」の増やし方
column 03 フェイスブックで農作業の応援隊を募集する

第4章 実践編II ツイッター
[1]ツイッターの使い方と活用方法
[2]ツイッターでのぼやき方
column 04 注目のSNS、LINE

第5章 実践編III フェイスブック+ツイッター+アルファ
[1]SNS+ブログ、メルマガ、ホームページの相乗効果
[2]販売の決め手 SNSからホームページへの導き方
[3]SNS、ブログ、メルマガの使い分け方
[4]SNS+リアルな交流の相乗効果
[5]イベント、メーカーズディナー、セミナーの行い方
column 05 リアルな交流で販売につなげる

第6章 SNSは農業を救う
[1]SNSは夢をかなえるためのツール
[2]SNSで儲かる農業の実践を
[3]今こそ農業を成長産業に
column 06 時間は自分で作るもの

対談
農業にはチャンスがある! これからの農業のあるべき姿

おわりに

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2014.11.22

▽吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日――『死の淵を見た男』

門田隆将『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』(PHP研究所)

同じ著者の『記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞』が、福島原発の外側で右往左往していた人々を描いたものなら、本書は、まさに福島原発の中で戦っていた人物を描いている。

その人物とは、福島第一原発所長の吉田昌郎である。

《多くの専門家が驚くのは、この早い段階で吉田が、消防車の手配までおこなわせたことである。……三台あった福島第一原発の消防車は津波のために動けなくなり、稼働可能なのは、たまたま高台にあった「一台」しかなかった。
 吉田は、それがわかった午後五時過ぎには、消防車の手配を要請している。ただちに自衛隊に伝えられ、福島第一原発に消防車が向かうことになるのだが、吉田が手配した消防車の存在が事故の拡大をぎりぎりで止めることになることを、この時点では誰も知らない。》(pp.59-60)

さまざまな不運と幸運が交錯する中で、吉田のこの判断が結果的には、事故の拡大をぎりぎりで食い止めたことがわかる。

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▽津波と放射能と福島民友新聞――『記者たちは海に向かった』

門田隆将『記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞』(角川書店)

本書は、2011年3月に、東日本大震災と福島原発事故が発生した際の、福島県紙『福島民友新聞』の活動を描いたものである。

地震発生直後や津波の様子、「紙齢を欠く」ことなく翌日の新聞を発行するための苦闘、そして原発事故――。

これらを記者たちの視点を通して描いていく。

しかし――。

大自然の力や原発事故という人智を超えた力の前では、人間の日々の営みを維持しようとする努力も、なにか空しいことのようにも感じられてしまうものだ。

そう言わざるを得ない。

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2014.11.11

▽なぜローカル経済から日本は甦るのか

富山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(筑摩書房)

《この二十年ほどの経済政策の論争は、新自由主義に行くか、社会民主主義に行くかというわかりやすい二項対立だった。それぞれ言い分はある。それぞれのロジックは一部有効で、一部有効ではなかった。どちらのイデオロギーに寄っても政策は行き詰まり、イデオロギーの議論によって明確な解は生まれなかった。その状況を見るにつけ、私はイデオロギーによる二項対立に違和感を覚えるようになった。》(p.36)

こうした問題意識から、著者は、グローバルに活動するG型経済と、日本国内だけで活動するL型経済とに分けて、それぞれの経済圏に応じた適切な政策をとるべきだ、と主張する。

細かい部分には異論を抱く読者もいるだろうが、大筋では頷ける意見である。

[目次]
第1章 グローバル(G)とローカル(L)という二つの世界
第2章 グローバル経済圏で勝ち抜くために
第3章 ローカル経済圏のリアル
第4章 ローカル経済圏は穏やかな退出と集約化で寡占的安定へ
第5章 集約の先にあるローカル経済圏のあるべき姿
第6章 GとLの成長戦略で日本の経済・賃金・雇用は再生する

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2014.11.08

▽『書店不屈宣言』

田口久美子『書店不屈宣言:わたしたちはへこたれない』(筑摩書房)

もはや毎年の恒例行事となった「村上春樹ノーベル賞とるんじゃね?」騒ぎの時に、書店側のバタバタぶりを描いていたこともあり、ちょっとした注目を集めたのが本書である。

これは、同じ著者の『書店繁盛記』(ポプラ文庫)と

『書店風雲録』(ちくま文庫)の続刊である。

書店員への取材を通して、書店員の暮らしぶりや考えていることを浮かび上がらせる手法で、出版業界のおかれている状況も描き出している。

最近の読書事情の電子書籍に関わる部分をちょっとだけ箇条書きすると、

・電子書籍は紙の20%くらいで落ち着くのでは無いか
・読み捨ては、新古書かレンタルだったが、これからは電子に
・とって置きたい本は紙だろう
・最近は研究者も本を読まない
・理系の研究者は専門誌しか読まない
・ネットにアップされる論文のフォローで必死
・データ類は紙よりもネット検索が優位に

というような状況のようです。

[目次]
“こうなりたい私”なんですよ―ノーベル賞と文芸書
言葉には力の序列がある―「国語・日本語学」の棚から
書店人生は「雑誌」で始まった―雑誌売場の今昔
ネコ日和
私はこの業界で生きていきます―コミック・ライトノベルの置き方
田口さん、『女子会』よく売れていますよ―人文書と「女子」書店員
子どもをバカにしちゃいけません―児童書という希望
池袋とどう違うの?―書店再編とシステム
マリコとトラジャ
『本』と『売れる本』―ネット書店その他
電子書籍はどこまできたのか

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2014.11.06

▽『アラバマ物語』を紡いだ作家

チャールズ・J・シールズ『「アラバマ物語」を紡いだ作家』(野沢佳織訳、柏書房)

『アラバマ物語』という古典的名作があります。原題は、"To Kill a Mockingbird"(モノマネ鳥を殺すこと)で、グレゴリー・ペック主演の映画にもなりました。

『アラバマ物語』の作者はハーパー・リーという女性ですが、実は、意外な人物とつながりがありました。

それは、ノンフィクション作家として知られるトルーマン・カポーティーです。この二人は、実は、幼なじみで、『アラバマ物語』に登場するディルは、カポーティーがモデルと言われています。

また、カポーティーの名を知らしめることになった『冷血』は、リーが綿密な取材を行い、多大な貢献を果たしたそうです。

しかし――。

二人の関係は思わぬ方向へとこじれていきます。

ハーパー・リーは、生涯に『アラバマ物語』しか残していないために、作家としては、あまり関心が持たれていなかったのですが、意外な人生を送っていたことがわかる重厚な伝記です。

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2014.11.03

▽セロニアス・モンクのいた風景

村上春樹『セロニアス・モンクのいた風景』(新潮社)

私は、ジャズについては疎いので、セロニアス・モンクについては、よく知らなかったのですが、文章のノリの良さに釣られて最後まで読んでしまいました。

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2014.11.02

▽デザインで読み解くフランス文化クロニクル1960

三宅理一『デザインで読み解くフランス文化クロニクル1960』(六曜社)

本書は、『デザインで読み解くフランス文化クロニクル1960』というタイトルそのままに、1960年代のフランスを代表するデザインについて語ることで、フランス文化を紹介するという試みです。

厳選された20のキーワードをピックアップして、写真や図なども適宜入れてあって、軽い読み物としても楽しめます。

シリーズには、『デザインで読み解くフランス文化―クロニクル1950』もあります。

おそらく、1970年代以降も続く予定と思われます。ちょっと期待してみてもいいかも。

[目次]
ヌーヴェル・ヴァーグ
ラ・デファンス副都心
デユラレックス・グラス・シリーズ
ロレアル、エルネット・サテン・ヘアスプレー
ルノー4
プア・ポーイ・セーター
マルロー法による歴史的環境の保護
ラングドク=ルシヨン余暇開発
TEE用電気機関車CC40100系
ミニドレス
シャペル・フジタ
サント=ベルナデット・デュ・バンレー聖堂
地中海クラブ・アガディール
グランド・ボルヌ集合住宅団地
パンタロン・スーツ
コスモコール・ドレス
五月革命
ジェテーム、モワ・ノンプリュ
コンコルド
エール・フランスの機内サービス・デザイン

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2014.11.01

▽日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか

山田奨治『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(人文書院)

本書を読んで、「日本の著作権が厳しい」ことは理解できたのですが、「なぜこんなに」の部分は、いま一つわかりませんでした。

ところで本書を読んでようやくわかったことが一つ。

それは、2003年に著作権が切れた(はずの)映画に関して。

映画の著作権保護期間は公開後50年だったことから、1953年に公開された映画は2003年12月31日に保護期間が終了した。

この保護期間は2004年1月1日に公開後70年へと延長されたものの、裁判の結果1953年公開の映画は2003年で保護期間が終了したことが確定した。

《ところが、これには思わぬ落とし穴があった。現在の著作権法が施行された一九七一年よりもまえの映画には、明治時代に作られた旧著作権法が適用される。そこには「独創性を有する映画」で個人著作物と認められる作品の保護期間は、著作者の死後三八年間と規定されていた。》(p.65)

黒澤明やチャップリンなどの著作権を持つ映画会社が裁判を起こし、これらの作品は旧著作権法における「独創性を有する映画」である、と認めさせることに成功したのだ。

その結果、黒澤明の主要作品は2036年、チャップリンの全作品は2015年まで、権利が続くことになった、という。

[目次]
第1章 パクリはミカエルの天秤を傾けるか?
第2章 それは権利の侵害です!?
第3章 法律を変えるひとびと
第4章 ダウンロード違法化はどのようにして決まったのか
第5章 海外の海賊版ソフトを考える
第6章 著作権秩序はどう構築されるべきか

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