2014.11.22

▽吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日――『死の淵を見た男』

門田隆将『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』(PHP研究所)

同じ著者の『記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞』が、福島原発の外側で右往左往していた人々を描いたものなら、本書は、まさに福島原発の中で戦っていた人物を描いている。

その人物とは、福島第一原発所長の吉田昌郎である。

《多くの専門家が驚くのは、この早い段階で吉田が、消防車の手配までおこなわせたことである。……三台あった福島第一原発の消防車は津波のために動けなくなり、稼働可能なのは、たまたま高台にあった「一台」しかなかった。
 吉田は、それがわかった午後五時過ぎには、消防車の手配を要請している。ただちに自衛隊に伝えられ、福島第一原発に消防車が向かうことになるのだが、吉田が手配した消防車の存在が事故の拡大をぎりぎりで止めることになることを、この時点では誰も知らない。》(pp.59-60)

さまざまな不運と幸運が交錯する中で、吉田のこの判断が結果的には、事故の拡大をぎりぎりで食い止めたことがわかる。


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