2015.04.22

▽『安倍政権と日本政治の新段階』

渡辺治『安倍政権と日本政治の新段階 新自由主義・軍事大国化・改憲にどう対抗するか』(旬報社)

本書はちょっと古く、2012年末の総選挙で自民党が大勝し、第二次安倍政権の発足を受けて書かれたもので、2013年5月に発行されたものです。

当時、読んだ時はいまひとつピンと来なかったのですが、改めて読み直してみると、自民党の小泉政権と安倍政権から、民主党、自民党第二次安倍政権のジグザグを、わりとうまく説明しているので内容を紹介します。

本書の前提として、自民党内には急進的構造改革派と漸進的構造改革派の対立があるということ、民主党はもともとは構造改革指向の政党であり、自民党と民主党の保守二大政党制が指向されていたことが、指摘されている。

簡単にまとめると次のような流れとなる。

橋本政権(急進的)→小渕政権と森政権(漸進的)→小泉政権と安倍政権(急進的)

そして、小泉政権の構造改革路線のアンチテーゼとして、もともとは構造改革指向だった民主党が、小沢一郎代表のもとで反構造改革路線に転向したことで、保守二大政党制が崩れることになる。

しかし、2007年の参院選の結果、第一次安倍政権が崩壊すると、漸進的構造改革指向の福田政権と麻生政権で自民党政権の延命を図ろうとするが失敗し、2009年の総選挙で民主党に政権の座を明け渡す。

しかし、政権につくとともに民主党は、構造改革反対、非軍事大国化から方向転換せざるを得なくなり、その結果、

《比喩的にいえば、民主党に対する「左」からの支持者層と「右」からの支持者層が相次いで離反してしまった》(p.19)

一方、政権の座を離れた自民党にも変質が現れていた。

《第一に、自民党は政権を離脱したために、統治政党として常に持ち続けてきた、国民統合を図るための自省を失った。その結果、自民党の右翼イデオロギー的な側面がもろに現れた。……
 第二に、自民党は、二〇〇〇年代に入って以降、地方構造改革政策のもとで、それまで官僚と癒着して地元や利益団体に補助金や公共事業を配分することによって維持してきた地域支配網を弱体化させた。……
 第三に、自民党の利益誘導派の長老の引退が、自民党内の安保・外交路線の右傾化、中国・韓国との協調路線の後退をもたらしたことも見逃せない》(pp.31-32)

「こうした自民、民主両党の変質・弱体化」により、「選挙のたびごとに議席の大変動」が起こり、「保守二大政党制の機能麻痺」がもたらされたという――。

[目次]
はじめに
第1章 参院選の結果が示す日本政治の方向―2つの「対案」対決の時代
一 参院選の3つの特徴―2つの「対案」の台頭
二 自民党の圧勝の新たな特徴と要因
1 自民党大勝の構造
2 大勝の原因・その1―小選挙区制と民主党減少に助けられた
3 大勝の原因・その2―アベノミクスへの仕方のない期待
4 安倍首相の本音・改憲志向を隠した
三 保守二大政党制の崩壊と保守多党制
四 共産党の躍進
1 共産党躍進の構造―歴史的回復への一歩
2 共産党躍進と都議会議員選挙
3 一三参院選における共産党躍進の原因・その1―保守二大政党制の崩壊
4 共産党躍進の原因・その2―運動の昂揚が政治の転換に結びついた
5 共産党躍進の原因・その3―アベノミクスへの対案が浸透しはじめた

第2章 参院選後、安倍政権の政治は何をめざすか?
一 参院選後の新たな政治体制―安倍政権を取り巻く困難な環境
1 アメリカの世界戦略の変化
2 財界の圧力
3 一党優位の保守多党制の困難
二 参院選後、安倍政権の改憲、軍事同盟強化の新戦略
1 安倍政権を取り巻く環境をふまえた新戦略
2 参院選後の解釈改憲の加速
(1) 解釈改憲の梃子―安保法制懇
(2) 国家安全保障基本法と自衛隊法改正
(3) 自衛隊の海外侵攻軍隊化
(4)「戦争する国」づくりも解釈改憲で一歩を
3 明文改憲の並行
三 参院選後、新自由主義改革は新段階へ―社会保障制度改革に焦点をあてて
1 アベノミクス第2幕
2 新自由主義再起動から新段階へ―社会保障構造改革に焦点をあてて

第3章 構造改革・改憲を阻み平和と福祉の実現をめざす国民的共同を
一 改憲・構造改革は阻むことができる
1 消費税引き上げをめぐる支配層内の対抗と苦悩
2 TPPも、原発再稼働も
3 集団的自衛権の解釈改憲と、改憲反対の声
二 国民的共同をつくるために・その1―参院選が示した教訓
1 社会と政治の連携
2 東京、大阪など大都市部の躍進の教訓
三 国民的共同をつくるために・その2―国民的共同づくりの3つの論点
1 安保共闘型とは異なる国民的共同
2 良心的保守層との長期にわたる共同
3 ますます重要な、福祉国家型対抗構想の提示
むすびに代えて―日本の進路をめぐる2つの道の対峙の時代

参考資料
1 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書(抜粋)(2008年6月24日)
2 国家安全保障基本法案(概要)(抄)(2012年7月4日)
3 自民党・新「防衛計画の大綱」策定にかかる提言(2013年6月4日)
4 「社会保障制度改革国民会議」報告書(抜粋)(2013年8月6日)

あとがき


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