2016.05.29

▽『失われた国家の富』――タックス・ヘイブンの経済学

ガブリエル・ズックマン『失われた国家の富:タックス・ヘイブンの経済学』(林昌広訳、NTT出版)

《為政者たちの勇ましい宣言にもかかわらず、脱税者たちは、ほぼ野放しの状態である。脱税者たちにとって唯一のリスクは。課税当局が何者かによって盗まれた資料を押収するか、税務申告をしていない口座に関する情報を偶然に入手する場合である。……皮肉なことにオンデマンド型の租税情報交換は、違法すれすれで得られた情報を利用しない限り、機能しないのである。》(p.86)

本書は、『タックス・ヘイブン』の実態を、統計データをもとに推計したもので、フランスでは2013年に出版(邦訳は2015年2月)されている。

最近、世界的に注目を集めている「パナマ文書」は、まさに「何者かによって盗まれた資料」である。

ズックマンの推計によると、タックスヘイブンに隠された金融資産は5兆8000億ユーロ(約800兆円)にのぼり、世界全体の家計の金融資産の8%を占めるという。

[目次]
 イントロダクション
  タックス・ヘイブンに対して行動を起こそう

 第1章 オフショア金融の時代
  タックス・ヘイブンの誕生
  タックス・ヘイブンとしてのスイスの黄金時代
  ヴァージン諸島、スイス、ルクセンブルグという魔の三角地帯

 第2章 国家の失われた富
  世帯の金融資産の8%
  ルクセンブルグという奈落の底
  千三百億ユーロの税収の喪失
  フランスの場合

 第3章 避けるべきミス
  自動的情報交換システムの誕生
  カユザック予算相の脱税事件からの教訓
  外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に期待できること
  EU貯蓄課税指令の大失敗

 第4章 何をなすべきか。新たなアプローチ
  金融制裁、貿易制裁
  正当化できて現実的な制裁
  制裁関税率計画を作成する
  ルクセンブルグ:これからまだ伸びるのか
  世界的な金融資産台帳の実現に向けて
  資本に対する課税
  多国籍企業の会計操作
 21世紀社会の租税

 解説
  タックス・ヘイブン入門
  本書の位置付け
  日本人にとってのタックス・ヘイブン


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