書評

2016.05.29

▽『失われた国家の富』――タックス・ヘイブンの経済学

ガブリエル・ズックマン『失われた国家の富:タックス・ヘイブンの経済学』(林昌広訳、NTT出版)

《為政者たちの勇ましい宣言にもかかわらず、脱税者たちは、ほぼ野放しの状態である。脱税者たちにとって唯一のリスクは。課税当局が何者かによって盗まれた資料を押収するか、税務申告をしていない口座に関する情報を偶然に入手する場合である。……皮肉なことにオンデマンド型の租税情報交換は、違法すれすれで得られた情報を利用しない限り、機能しないのである。》(p.86)

本書は、『タックス・ヘイブン』の実態を、統計データをもとに推計したもので、フランスでは2013年に出版(邦訳は2015年2月)されている。

最近、世界的に注目を集めている「パナマ文書」は、まさに「何者かによって盗まれた資料」である。

ズックマンの推計によると、タックスヘイブンに隠された金融資産は5兆8000億ユーロ(約800兆円)にのぼり、世界全体の家計の金融資産の8%を占めるという。

[目次]
 イントロダクション
  タックス・ヘイブンに対して行動を起こそう

 第1章 オフショア金融の時代
  タックス・ヘイブンの誕生
  タックス・ヘイブンとしてのスイスの黄金時代
  ヴァージン諸島、スイス、ルクセンブルグという魔の三角地帯

 第2章 国家の失われた富
  世帯の金融資産の8%
  ルクセンブルグという奈落の底
  千三百億ユーロの税収の喪失
  フランスの場合

 第3章 避けるべきミス
  自動的情報交換システムの誕生
  カユザック予算相の脱税事件からの教訓
  外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に期待できること
  EU貯蓄課税指令の大失敗

 第4章 何をなすべきか。新たなアプローチ
  金融制裁、貿易制裁
  正当化できて現実的な制裁
  制裁関税率計画を作成する
  ルクセンブルグ:これからまだ伸びるのか
  世界的な金融資産台帳の実現に向けて
  資本に対する課税
  多国籍企業の会計操作
 21世紀社会の租税

 解説
  タックス・ヘイブン入門
  本書の位置付け
  日本人にとってのタックス・ヘイブン

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2015.05.23

▽『オフ・ザ・マップ』――世界から隔絶された場所

アラステア・ボネット『オフ・ザ・マップ 世界から隔絶された場所』(夏目大訳、イースト・プレス)

本書は、英ニューカッスル大学地理社会学教授であるアラステア・ボネットが、世界中の「隔絶された場所」について書いたものである。

ある場所が周囲から隔絶されてしまう理由は、さまざまだ。地図に載っていない場所、国と国の狭間の場所、あるいは飛び地や未承認国家などなど。なるほどなるほど、と読むことができる。

写真がないことが少し本書の価値を下げているかもしれないが……。

また、「廃墟と化した場所」として、チェルノブイリのゴーストタウン「プリピャチ」も紹介されているものの……。

原著は2014年に出版されているが、2011年の原発事故以降、人が住めなくなっている(おそらく半永久的に)福島県双葉郡が本書に含まれていないのはなぜ? と思わざるを得ない。

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2015.04.26

▽『国際メディア情報戦』

高木徹『国際メディア情報戦』(講談社現代新書)

NHKプロデューサー高木徹による著作は、以前にも

▽『大仏破壊―ビンラディン、9・11へのプレリュード』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/05/911-0949.html

を紹介したことがあります。これは、タリバンによるバーミヤンの大仏破壊を描いたもので、タリバンがオサマ・ビンラディン率いるアルカイダにいかに乗っ取られていったかを綴っています。

これより前にも、ボスニア紛争における情報戦を描いた『ドキュメント 戦争広告代理店』という著作がありますが、本書『国際メディア情報戦』はそれに連なるものです。

海外におけるテロや政治やメディアの事情を知る上で役に立つ情報も多いものの、「では、日本はどうなのよ?」という疑問もわいてきてしまいます。特に、3.11による福島原発事故をめぐる報道は? と素朴に思います。

NHK所属の著者の限界と言えるかも知れません。

また、本書は2014年1月発行なのですが、その後に台頭してきたいわゆる「イスラム国」のメディア戦略も、もちろんフォローされていません。

この「国際メディア情報戦」という分野は、真実を後から知ったところで、もう手遅れになってることも多いわけで、リアルタイムに対抗していくには、NHKをはじめとするマスコミにも頑張ってもらわにゃ、と思うわけです。

[目次]
まえがき
序 章 「イメージ」が現実を凌駕する
第1章 情報戦のテクニック ジム・ハーフとボスニア紛争
第2章 地上で最も熾烈な情報戦 アメリカ大統領選挙
第3章 21世紀最大のメディアスター ビンラディン
第4章 アメリカの逆襲 対テロ戦争
第5章 さまようビンラディンの亡霊 次世代アルカイダ
第6章 日本が持っている「資産」
終 章 倫理をめぐる戦場で生き残るために
あとがき

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2015.04.22

▽『安倍政権と日本政治の新段階』

渡辺治『安倍政権と日本政治の新段階 新自由主義・軍事大国化・改憲にどう対抗するか』(旬報社)

本書はちょっと古く、2012年末の総選挙で自民党が大勝し、第二次安倍政権の発足を受けて書かれたもので、2013年5月に発行されたものです。

当時、読んだ時はいまひとつピンと来なかったのですが、改めて読み直してみると、自民党の小泉政権と安倍政権から、民主党、自民党第二次安倍政権のジグザグを、わりとうまく説明しているので内容を紹介します。

本書の前提として、自民党内には急進的構造改革派と漸進的構造改革派の対立があるということ、民主党はもともとは構造改革指向の政党であり、自民党と民主党の保守二大政党制が指向されていたことが、指摘されている。

簡単にまとめると次のような流れとなる。

橋本政権(急進的)→小渕政権と森政権(漸進的)→小泉政権と安倍政権(急進的)

そして、小泉政権の構造改革路線のアンチテーゼとして、もともとは構造改革指向だった民主党が、小沢一郎代表のもとで反構造改革路線に転向したことで、保守二大政党制が崩れることになる。

しかし、2007年の参院選の結果、第一次安倍政権が崩壊すると、漸進的構造改革指向の福田政権と麻生政権で自民党政権の延命を図ろうとするが失敗し、2009年の総選挙で民主党に政権の座を明け渡す。

しかし、政権につくとともに民主党は、構造改革反対、非軍事大国化から方向転換せざるを得なくなり、その結果、

《比喩的にいえば、民主党に対する「左」からの支持者層と「右」からの支持者層が相次いで離反してしまった》(p.19)

一方、政権の座を離れた自民党にも変質が現れていた。

《第一に、自民党は政権を離脱したために、統治政党として常に持ち続けてきた、国民統合を図るための自省を失った。その結果、自民党の右翼イデオロギー的な側面がもろに現れた。……
 第二に、自民党は、二〇〇〇年代に入って以降、地方構造改革政策のもとで、それまで官僚と癒着して地元や利益団体に補助金や公共事業を配分することによって維持してきた地域支配網を弱体化させた。……
 第三に、自民党の利益誘導派の長老の引退が、自民党内の安保・外交路線の右傾化、中国・韓国との協調路線の後退をもたらしたことも見逃せない》(pp.31-32)

「こうした自民、民主両党の変質・弱体化」により、「選挙のたびごとに議席の大変動」が起こり、「保守二大政党制の機能麻痺」がもたらされたという――。

[目次]
はじめに
第1章 参院選の結果が示す日本政治の方向―2つの「対案」対決の時代
一 参院選の3つの特徴―2つの「対案」の台頭
二 自民党の圧勝の新たな特徴と要因
1 自民党大勝の構造
2 大勝の原因・その1―小選挙区制と民主党減少に助けられた
3 大勝の原因・その2―アベノミクスへの仕方のない期待
4 安倍首相の本音・改憲志向を隠した
三 保守二大政党制の崩壊と保守多党制
四 共産党の躍進
1 共産党躍進の構造―歴史的回復への一歩
2 共産党躍進と都議会議員選挙
3 一三参院選における共産党躍進の原因・その1―保守二大政党制の崩壊
4 共産党躍進の原因・その2―運動の昂揚が政治の転換に結びついた
5 共産党躍進の原因・その3―アベノミクスへの対案が浸透しはじめた

第2章 参院選後、安倍政権の政治は何をめざすか?
一 参院選後の新たな政治体制―安倍政権を取り巻く困難な環境
1 アメリカの世界戦略の変化
2 財界の圧力
3 一党優位の保守多党制の困難
二 参院選後、安倍政権の改憲、軍事同盟強化の新戦略
1 安倍政権を取り巻く環境をふまえた新戦略
2 参院選後の解釈改憲の加速
(1) 解釈改憲の梃子―安保法制懇
(2) 国家安全保障基本法と自衛隊法改正
(3) 自衛隊の海外侵攻軍隊化
(4)「戦争する国」づくりも解釈改憲で一歩を
3 明文改憲の並行
三 参院選後、新自由主義改革は新段階へ―社会保障制度改革に焦点をあてて
1 アベノミクス第2幕
2 新自由主義再起動から新段階へ―社会保障構造改革に焦点をあてて

第3章 構造改革・改憲を阻み平和と福祉の実現をめざす国民的共同を
一 改憲・構造改革は阻むことができる
1 消費税引き上げをめぐる支配層内の対抗と苦悩
2 TPPも、原発再稼働も
3 集団的自衛権の解釈改憲と、改憲反対の声
二 国民的共同をつくるために・その1―参院選が示した教訓
1 社会と政治の連携
2 東京、大阪など大都市部の躍進の教訓
三 国民的共同をつくるために・その2―国民的共同づくりの3つの論点
1 安保共闘型とは異なる国民的共同
2 良心的保守層との長期にわたる共同
3 ますます重要な、福祉国家型対抗構想の提示
むすびに代えて―日本の進路をめぐる2つの道の対峙の時代

参考資料
1 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書(抜粋)(2008年6月24日)
2 国家安全保障基本法案(概要)(抄)(2012年7月4日)
3 自民党・新「防衛計画の大綱」策定にかかる提言(2013年6月4日)
4 「社会保障制度改革国民会議」報告書(抜粋)(2013年8月6日)

あとがき

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2015.04.06

▽『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』

柴那典『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)

本書は、「初音ミク」を音楽史の中に位置づけようとする試みである。

本書によると、音楽の歴史には、「サマー・オブ・ラブ」と呼ばれる時期が存在するという。

一度目は1967年の米西海岸、二度目は1980年代後半のイギリス。そして、初音ミクの登場した2007年は、三度目の「サマー・オブ・ラブ」という……。

ま、そんなことはさておき(笑)、本書を読むと、初音ミクを中心とした現象の流れを追うことができます。しかし、本書では、「初音ミク」にのみ焦点をあわせているために、初音ミク以外のボーカロイドについてはフォローされていません……。

初音ミクについては2007年の登場以来、ずっと関心を持ってきましたので、本書に書かれていることもだいたいは思い出すことができます。

にもかかわらず、ある時点から、初音ミクに関する記憶が抜け落ちてしまっていることに気がつきます。それはどの時点だろうか、と考えながら読み進めると、やはり2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島原発事故以来だと言うことがわかります。

初音ミクのクロニクルにおいて、2011年はどんな年だったか?

2011年9月にニコニコ動画に投稿された二つの曲「千本桜」と「カゲロウ・デイズ」が、その後にメディア・ミックス的なムーブメントへと拡大していきます。このあたりで、ちょっとついていけなくなった感はあります。

初音ミクの生みの親とも言えるクリプトン・フューチャー・メディアの伊藤博之社長に、本書の著者がなげかけた言葉――。

《――今回の単行本の取材では、いろんな関係者の方にお話を伺ってきましたが、皆さん、声をそろえて「奇跡的なタイミングだった」「運命的なタイミングだった」と仰っていました。当時は気づかなくても、後から振り返れば本当にそうだった、と。》(p.261)

ほんこれ(笑)。

[目次]
序章 僕らはサード・サマー・オブ・ラブの時代を生きていた
・新しい「幕開け」がそこにあった
・「誰が音楽を殺したのか?」の犯人探しが行われていた二〇〇七年
・新しい「遊び場」が生まれた年
・二十年おきに訪れる「サマー・オブ・ラブ」

第一章 初音ミクが生まれるまで
・二〇年前からずっと繋がっている
・それは三行広告から始まった
・MIDIとDTM文化の登場
・初音ミクに受け継がれた名機「DX7」
・ベッドルーム・ミュージシャンたちの静かな楽園

第二章 ヒッピーたちの見果てぬ夢
・六〇年代に生まれた音楽家の「遊び場」
・「帰って来たヨッパライ」が日本のロックを変えた
・「サマー・オブ・ラブ」とは何だったのか
・ヒッピーカルチャーとコンピュータ文化を繋いだ男
・セカンド・サマー・オブ・ラブとレイヴの時代

第三章 デイジー・ベルからボーカロイドへ
・歌声だけが取り残されていた
・最初に歌った言葉「あさ」
・『二〇〇一年宇宙の旅』、死にゆくコンピュータの歌
・モーグ博士と「パプペポ親父」

第四章 初音ミク誕生前夜
・無風だった最初のボーカロイド
・声優・藤田咲を起用した理由
・アンダーグラウンドシーンから開発者の道へ
・初音ミク誕生の裏側にあった、竹村延和の一言
・「同人音楽」という土壌
・ニコニコ動画とMAD文化

第五章 「現象」は何故生まれたか
・二〇〇七年の「運命的なタイミング」
・仕掛け人は誰もいなかった
・「このビッグバンが、次の時代へのリファレンスになる」

第六章 電子の歌姫に「自我」が芽生えたとき
・キャラクターからクリエイターへ
・「メルト」が変えた風景
・ルーツにあった「強度」
・「歌ってみた」とエレックレコード

第七章 拡大する「遊び」が音楽産業を変えた
・ヒットチャートを侵食する新たな波
・カラオケと著作権の新しい関係
・三次元に舞い降りた歌姫

第八章 インターネットアンセムの誕生
・「世の中が動くかもしれない」
・初音ミクがウェブの「日本代表」に
・「ヘイル・トゥ・インターネット」
・二〇一二年の「ホテル・カリフォルニア」

第九章 浮世絵化するJポップとボーカロイド
・「千本桜」は何故ヒットしたのか
・「カゲロウプロジェクト」が受け継いだ一〇代の魂
・Jポップの「物語音楽」化
・「高密度ポップ」の誕生
・ボーカロイド「高速化」の理由

第一〇章 初音ミクと「死」の境界線
・揺らぐ「いる」と「いない」の感覚
・創造をもって死を乗り越える、ということ
・パリ・シャトレ座に響いた「終わり」のアリア

終章 未来へのリファレンス
・最初は消えそうなくらい小さな炎だった
・初音ミクと「情報革命」
・消耗品になってほしくなかった
・ブームは去っても、カルチャーは死なない
・新しい音楽文化の可能性
・音楽の未来、クリエイティブの未来

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2015.01.26

▽『朝日新聞』――日本型組織の崩壊

朝日新聞記者有志『朝日新聞 日本型組織の崩壊』(文春新書)

朝日新聞記者有志なる著者が、最近の朝日新聞をめぐるあれやこれやの内幕を暴露したもの。朝日叩きの急先鋒だった文藝春秋から出版しているのも味わい深い。

いろいろと驚いたことを箇条書きすると、

・従軍慰安婦の検証は、当初は自社記事を補強するための前向きな検証作業だった
・それが社内に知らせずに突然の訂正記事になった
・お詫び付きバージョンも作成したがそれはホゴにされた
・池上彰のコラム掲載拒否は木村社長の指示だったが記者会見では部下に責任を押しつけた
・東京電力の「吉田調書」の記事では東電の社員にまったく取材をしていなかった
・続報は他紙で既報済みだった
・『週刊朝日』のハシシタ記事は社運をかけていたため誰も批判できなかった
・社内の秘密が週刊誌に頻繁にリークされるがやってるのは幹部クラスらしい

などなど……。

ほんとうに朝日新聞は、どうなっちゃうんでしょうねえ?

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2014.11.29

▽『<役割語>小辞典』

金水敏『<役割語>小辞典』(研究社)

「役割語」とは?

《話し方と人物像が結びついているとき、その話し方を役割語というわけですが、話し方には語彙、話法、言い回し、イントネーション等の要素がある》(p.vi)

このような視点で、さまざまな「役割語」を収集し、辞書的に配列して解説を加えたものが本書である。

たとえば、「ほほほ・おほほ」は、

《笑い声を表す感動詞。口元を手でおおったりして控えめに軽く笑う笑い方。主として女性の笑い声を表す(<女ことば>)。》(p.170)

もちろん挿絵は、『エースをねらえ!』のお蝶夫人(笑)。

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▽タブーの民俗学手帳――『禁忌習俗事典』

柳田国男『禁忌習俗事典』(河出書房新社)

本書は、柳田国男の全集未収録の記録を復刻するシリーズの一冊で、原著が発行されたのは1938年である。

《我邦では現在イミという一語が、かなり差別の著しい二つ以上の用途に働いている。》(p.2)

本書を読んでいくと、「火に負ける」など、「火」が「忌」の意味で使われているケースが多いことに気づく。

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2014.11.27

▽書店員のリアルな姿――『出版営業百ものがたり』

齋藤一郎『出版営業百ものがたり』(遊友出版)

カリスマ書店員の武勇伝みたいな本は、ちょくちょく見かけますが、本書は、出版社の営業マンの綴ったコラムです。

営業マンとしての本音、他社の営業マンや書店員への共感や不満も、割と率直に綴られていて、なかなか興味く読むことができます。

出版業界紙『新文化』に1994年2月~2005年10月まで連載されたものを、加筆してまとめたもの。一つのコラムが見開き2ページに収められていて、カチッとした文章を味わうこともできますね。

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2014.11.23

▽SNSで農業革命

蓮見よしあき『SNSで農業革命』(碩学舎ビジネス双書)

本書は、2005年に長野県に移住し、自社ブランドのワイン製造に取り組んだ著者が、いかにSNSを活用したかを綴ったものである。

2010年には「はすみふぁーむ」ブランドのワインの販売を開始するとともに、ワイナリーの建設を開始。さらに、この年から始めたツイッターとフェイスブックが、大きな転機をもたらします。

年間1万本ほどのワインを出荷しますが、SNSを通じて、ほぼすべてが販売できているそうです。

著者が、どのようにSNSを活用したかについては、本書に詳しく書かれていますが、最後にホリエモンがしれっと対談に登場しているのは、いかにもビジネス書な感じで、ガッカリ感がありますね(笑)。

[目次]
第1章 なぜ今、農業にSNSが必要なのか
[1]「はすみふぁーむ&ワイナリー」の軌跡
[2]これからの農業に必要な2つのこと
[3]6次産業化+SNSでさらに強い農業へ
column 01 SNSやるならパソコン? それともスマートフォン??

第2章 SNSで広がる農業経営のアイディア
[1]SNSを使うと何ができるのか
[2]ブランディングで商品価値を高める
[3]農業人としてのSNSとの向き合い方
[4]SNSで世界に勝てる農業を
column02 ブランディングに必要なのは経営者の人間的魅力

第3章 実践編I フェイスブック
[1]フェイスブックの使い方と活用方法
[2]応援してくれる人を増やすブランディング法
[4]「いいね! 」の増やし方
column 03 フェイスブックで農作業の応援隊を募集する

第4章 実践編II ツイッター
[1]ツイッターの使い方と活用方法
[2]ツイッターでのぼやき方
column 04 注目のSNS、LINE

第5章 実践編III フェイスブック+ツイッター+アルファ
[1]SNS+ブログ、メルマガ、ホームページの相乗効果
[2]販売の決め手 SNSからホームページへの導き方
[3]SNS、ブログ、メルマガの使い分け方
[4]SNS+リアルな交流の相乗効果
[5]イベント、メーカーズディナー、セミナーの行い方
column 05 リアルな交流で販売につなげる

第6章 SNSは農業を救う
[1]SNSは夢をかなえるためのツール
[2]SNSで儲かる農業の実践を
[3]今こそ農業を成長産業に
column 06 時間は自分で作るもの

対談
農業にはチャンスがある! これからの農業のあるべき姿

おわりに

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2014.11.22

▽吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日――『死の淵を見た男』

門田隆将『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』(PHP研究所)

同じ著者の『記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞』が、福島原発の外側で右往左往していた人々を描いたものなら、本書は、まさに福島原発の中で戦っていた人物を描いている。

その人物とは、福島第一原発所長の吉田昌郎である。

《多くの専門家が驚くのは、この早い段階で吉田が、消防車の手配までおこなわせたことである。……三台あった福島第一原発の消防車は津波のために動けなくなり、稼働可能なのは、たまたま高台にあった「一台」しかなかった。
 吉田は、それがわかった午後五時過ぎには、消防車の手配を要請している。ただちに自衛隊に伝えられ、福島第一原発に消防車が向かうことになるのだが、吉田が手配した消防車の存在が事故の拡大をぎりぎりで止めることになることを、この時点では誰も知らない。》(pp.59-60)

さまざまな不運と幸運が交錯する中で、吉田のこの判断が結果的には、事故の拡大をぎりぎりで食い止めたことがわかる。

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▽津波と放射能と福島民友新聞――『記者たちは海に向かった』

門田隆将『記者たちは海に向かった 津波と放射能と福島民友新聞』(角川書店)

本書は、2011年3月に、東日本大震災と福島原発事故が発生した際の、福島県紙『福島民友新聞』の活動を描いたものである。

地震発生直後や津波の様子、「紙齢を欠く」ことなく翌日の新聞を発行するための苦闘、そして原発事故――。

これらを記者たちの視点を通して描いていく。

しかし――。

大自然の力や原発事故という人智を超えた力の前では、人間の日々の営みを維持しようとする努力も、なにか空しいことのようにも感じられてしまうものだ。

そう言わざるを得ない。

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2014.11.11

▽なぜローカル経済から日本は甦るのか

富山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(筑摩書房)

《この二十年ほどの経済政策の論争は、新自由主義に行くか、社会民主主義に行くかというわかりやすい二項対立だった。それぞれ言い分はある。それぞれのロジックは一部有効で、一部有効ではなかった。どちらのイデオロギーに寄っても政策は行き詰まり、イデオロギーの議論によって明確な解は生まれなかった。その状況を見るにつけ、私はイデオロギーによる二項対立に違和感を覚えるようになった。》(p.36)

こうした問題意識から、著者は、グローバルに活動するG型経済と、日本国内だけで活動するL型経済とに分けて、それぞれの経済圏に応じた適切な政策をとるべきだ、と主張する。

細かい部分には異論を抱く読者もいるだろうが、大筋では頷ける意見である。

[目次]
第1章 グローバル(G)とローカル(L)という二つの世界
第2章 グローバル経済圏で勝ち抜くために
第3章 ローカル経済圏のリアル
第4章 ローカル経済圏は穏やかな退出と集約化で寡占的安定へ
第5章 集約の先にあるローカル経済圏のあるべき姿
第6章 GとLの成長戦略で日本の経済・賃金・雇用は再生する

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2014.11.06

▽『アラバマ物語』を紡いだ作家

チャールズ・J・シールズ『「アラバマ物語」を紡いだ作家』(野沢佳織訳、柏書房)

『アラバマ物語』という古典的名作があります。原題は、"To Kill a Mockingbird"(モノマネ鳥を殺すこと)で、グレゴリー・ペック主演の映画にもなりました。

『アラバマ物語』の作者はハーパー・リーという女性ですが、実は、意外な人物とつながりがありました。

それは、ノンフィクション作家として知られるトルーマン・カポーティーです。この二人は、実は、幼なじみで、『アラバマ物語』に登場するディルは、カポーティーがモデルと言われています。

また、カポーティーの名を知らしめることになった『冷血』は、リーが綿密な取材を行い、多大な貢献を果たしたそうです。

しかし――。

二人の関係は思わぬ方向へとこじれていきます。

ハーパー・リーは、生涯に『アラバマ物語』しか残していないために、作家としては、あまり関心が持たれていなかったのですが、意外な人生を送っていたことがわかる重厚な伝記です。

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2014.11.03

▽セロニアス・モンクのいた風景

村上春樹『セロニアス・モンクのいた風景』(新潮社)

私は、ジャズについては疎いので、セロニアス・モンクについては、よく知らなかったのですが、文章のノリの良さに釣られて最後まで読んでしまいました。

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2014.11.02

▽デザインで読み解くフランス文化クロニクル1960

三宅理一『デザインで読み解くフランス文化クロニクル1960』(六曜社)

本書は、『デザインで読み解くフランス文化クロニクル1960』というタイトルそのままに、1960年代のフランスを代表するデザインについて語ることで、フランス文化を紹介するという試みです。

厳選された20のキーワードをピックアップして、写真や図なども適宜入れてあって、軽い読み物としても楽しめます。

シリーズには、『デザインで読み解くフランス文化―クロニクル1950』もあります。

おそらく、1970年代以降も続く予定と思われます。ちょっと期待してみてもいいかも。

[目次]
ヌーヴェル・ヴァーグ
ラ・デファンス副都心
デユラレックス・グラス・シリーズ
ロレアル、エルネット・サテン・ヘアスプレー
ルノー4
プア・ポーイ・セーター
マルロー法による歴史的環境の保護
ラングドク=ルシヨン余暇開発
TEE用電気機関車CC40100系
ミニドレス
シャペル・フジタ
サント=ベルナデット・デュ・バンレー聖堂
地中海クラブ・アガディール
グランド・ボルヌ集合住宅団地
パンタロン・スーツ
コスモコール・ドレス
五月革命
ジェテーム、モワ・ノンプリュ
コンコルド
エール・フランスの機内サービス・デザイン

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2014.11.01

▽日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか

山田奨治『日本の著作権はなぜこんなに厳しいのか』(人文書院)

本書を読んで、「日本の著作権が厳しい」ことは理解できたのですが、「なぜこんなに」の部分は、いま一つわかりませんでした。

ところで本書を読んでようやくわかったことが一つ。

それは、2003年に著作権が切れた(はずの)映画に関して。

映画の著作権保護期間は公開後50年だったことから、1953年に公開された映画は2003年12月31日に保護期間が終了した。

この保護期間は2004年1月1日に公開後70年へと延長されたものの、裁判の結果1953年公開の映画は2003年で保護期間が終了したことが確定した。

《ところが、これには思わぬ落とし穴があった。現在の著作権法が施行された一九七一年よりもまえの映画には、明治時代に作られた旧著作権法が適用される。そこには「独創性を有する映画」で個人著作物と認められる作品の保護期間は、著作者の死後三八年間と規定されていた。》(p.65)

黒澤明やチャップリンなどの著作権を持つ映画会社が裁判を起こし、これらの作品は旧著作権法における「独創性を有する映画」である、と認めさせることに成功したのだ。

その結果、黒澤明の主要作品は2036年、チャップリンの全作品は2015年まで、権利が続くことになった、という。

[目次]
第1章 パクリはミカエルの天秤を傾けるか?
第2章 それは権利の侵害です!?
第3章 法律を変えるひとびと
第4章 ダウンロード違法化はどのようにして決まったのか
第5章 海外の海賊版ソフトを考える
第6章 著作権秩序はどう構築されるべきか

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2014.10.30

▽クックパッド社員の名刺の秘密

横川潤『クックパッド社員の名刺の秘密』(講談社)

クックパッド社員の名刺の秘密とは?

それは、「料理のレシピが掲載されている」です。

名刺の裏面には、料理の写真入りの詳細なレシピが、表面の上半分にも同じ料理の写真、社名や部署名や社員名は、表面の下半分に記されています。

《できあがった名刺には思いがけない効果があった。
 クックパッドがレシピの会社だというのが一目瞭然で理解してもらえる。》(p.41)

本書の内容は、ちょっと散漫ですが、クックパッドが楽しい会社であることは伝わってきます。

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▽ヴィクトリア時代の一つの人生、二つの履歴書――『名探偵ホームズとドイル』

川村幹夫『名探偵ホームズとドイル―ヴィクトリア時代の一つの人生、二つの履歴書』(海竜社)

名探偵シャーロック・ホームズと、その生みの親であるコナン・ドイルの人生を、彼らの生きたヴィクトリア朝時代イギリスの社会背景などを踏まえつつ描いた人物伝。

あまり新発見めいたところは無いものの、入門書としては、割とよくまとまっている。

ドイルが生きた時代というのは、1849年から1930年までで、産業革命が起こるなどイギリスがもっとも栄えた時代であった。

ところで、ホームズが相棒となるワトソンと初めて出会ったのは1881年のことであるが、この時ホームズはワトソンがアフガニスタンに出征していたことを言い当てる。ワトソンは第二次アフガン戦争に軍医として従軍していたのだが、アフガニスタン戦争や、クリミア戦争など、この時代から国際情勢の火種となっていたことも良くわかる。

[目次]
第1章 ホームズとドイルが活躍した時代風景
  ―大英帝国の光と影のはざまで
第2章 名探偵ホームズ、彗星のごとく現る
  ―盟友ワトソンとの出会いと華々しい活躍
第3章 ドイル、苦闘の医学生時代
  ―貧乏と家庭崩壊の中で
第4章 ホームズ、一躍スターダムへ
  ―ホームズ物語の大成功
第5章 妻と恋人の間で深まる苦悩の日々
  ―ドイルの「二重生活」の始まり
第6章 作家としての絶頂期と第一次大戦
  ―大英帝国の不滅を信じて
第7章 心霊主義への転向、そして「次なる世界へ」
  ―文豪コナン・ドイルは、次なる世界で生き続ける

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2014.10.28

▽『忠臣蔵はなぜ人気があるのか』

稲田和浩『忠臣蔵はなぜ人気があるのか』(フィギュール彩)

本書から学んだ『忠臣蔵』の基礎知識。

発端となった浅野長矩による、吉良義央に対する刃傷沙汰は実際にあった事件だったが、その原因や詳細は、はっきりしていない。

浅野長矩の切腹、赤穂藩断絶は事実。

赤穂浪士による吉良邸への討ち入り、切腹も事実。

その後、浅野家は下総に再興された。

さまざまなバージョンの『忠臣蔵』がつくられた。

講談では『赤穂義士伝』が代表的作品。

歌舞伎、浄瑠璃では『仮名手本忠臣蔵』が代表的作品。

『忠臣蔵』は忠義の家臣、大石内蔵助の意。

『仮名手本忠臣蔵』は、太平記に時代を移しているので、登場人物の名前も違う。

『仮名手本忠臣蔵』の裏の話として、江戸時代に『東海道四谷怪談』がつくられた。

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▽『ヤクザに死す』

安田雅企『ヤクザに死す』(宝島社文庫)

《私が出会ったヤクザたちは、平組員で最低五人、幹部で十~二十人、組長級だと百人以上の堅気のビジネス・パートナーをもっていた。両者は必要に迫られ、密着していた。私はそうした堅気たち、ヤクザを使って利益を上げている人たちを多数見てきた。》(p.332)

本書は、1992年10月に発行された『正月はヤクザのアパートで』を改題・改訂して、2000年に文庫化されたもののため、内容的には、1992年3月のいわゆる「暴対法」施行前のヤクザ事情について綴られている。

「暴対法」は、2008年、2012年にも強化されているとはいえ、本書に描かれているような事情は、まあ、あまり変わっていないのでしょうね。

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2014.10.27

▽『あかんやつら』――東映京都撮影所血風録

春日太一『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』(文藝春秋)

映画ライターの春日太一が東映京都撮影所を通史的に掘り下げた労作……。

スタジオ、作品、プロデューサー、監督、スタッフ、役者と、焦点がぼやけて、まとまりがなく、散漫になってしまったかなあ、という印象です。

[目次]
小指のない門番

第1部 時代劇黄金期
 東映京都を創った男
 親父に捧げる『赤穂浪士』
 鬼の岡田

第2部 混乱する撮影所
 時代劇の凋落
 集団時代劇の興亡
 岡田茂の改革

第3部 暴力とエロスの都
 任侠映画、快進撃
 女の世界を覗き見る
 『仁義なき戦い』

第4部 必死のサバイバル
 高岩淡所長と映画村
 迷走する大作映画

逆風の中で

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▽『映画の奈落』――北陸代理戦争事件

伊藤彰彦『映画の奈落: 北陸代理戦争事件』(国書刊行会)

『仁義なき戦い』から始まった東映の実録ヤクザ路線も、高田宏治脚本の『北陸代理戦争』で終結せざるを得なかった、その顛末を描いたのが本書である。

映画のモデルになった組長がヒットマンにより射殺されたこと。

そして、『仁義なき戦い』四作の脚本を書いた笠原和夫の後を引き継くかたちで、『仁義なき戦い・完結編』の脚本を担当した高田宏治が、評論家から酷評されたこと。

『北陸代理戦争』の背後に存在した因縁を執拗に描いている。

高田宏治がその後、『鬼龍院花子の生涯』や『極道の妻たち』シリーズでヒットを飛ばしたことなどを考えると、ちょっと因縁の部分を強調し過ぎかなという印象も持ちますね。

[目次]
序章 『北陸代理戦争』
第一章 事件 一九七七年四月十三日
第二章 笠原和夫対高田宏治 企画 一九七六年十月
第三章 両目ができた 取材 一九七六年十一月
第四章 太秦蛸部屋寮 脚本執筆 一九七六年十二月
第五章 性転換手術 脚本改稿/一九七七年一月
第六章 県警対東映京都 撮影/一九七七年一月~二月
第七章 奈落へ向かう人々 封切りと三国事件 一九七七年二月~四月
第八章 暁の7人 復讐 一九七七年四月~十一月
第九章 女が水を血に変えるとき その後の高田と深作
終章 それぞれの三十七年
取材者一覧・引用文献一覧・あとがき・索引(人名・映画題名)

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2014.10.21

▽『世襲議員のからくり』

上杉隆『世襲議員のからくり』(文春新書)

上杉隆の『世襲議員のからくり』――。

2009年の発売当時に読んでいたので、すでに書評も書いたものだと思っていたら、書いていませんでした(笑)。

本書は、2008年9月に福田康夫首相が辞任して、世襲議員の総理が二代続けて一年で辞任するという異常事態が発生する、その直前くらいから『週刊文春』が取材を開始したキャンペーンをまとめたものです。

もちろんいま話題の小渕優子の「世襲のからくり」もバッチリ書かれています。政治資金管理団体を使うと相続税をゼロにできる、というゆゆしき事態が明らかにされていますね。

いまさらですが、さすがのスクープだったといえます。

[目次]
第1章 二世の投げ出しはなぜ続く
第2章 民主党の二世たち
第3章 からくりその1―政治資金管理団体の非課税相続
第4章 からくりその2―後援会組織の世襲
第5章 からくりその3―どんな無理もする「看板の世襲」
第6章 世襲大国日本
第7章 国民の意思が世襲を断ち切る

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2014.10.14

▽26歳の法則――『年齢学序説』

博多大吉『年齢学序説』(幻冬舎よしもと文庫)

お笑いコンビ博多華丸・大吉のつっこみ担当、ラジオパーソナリティー、そして物書きとしても活躍する博多大吉が、2010年に上梓した(追記のある文庫版は2014年)のが本書『年齢学序説』である。

ダウンタウン、とんねるず、そして、ウッチャンナンチャンの3つのお笑いコンビが出世作となる番組を始めたのが、いずれも26歳だった――。

この「26歳の法則」に気がつくところから、大吉の「年齢学」は始まる……。

まあ、「学」というほどの精緻な議論ではないのですが、お笑い芸人やその他の分野の著名人の節目の時期を簡潔に知ることができます。

なにより興味深いのは、博多時代の華丸・大吉コンビの26歳の頃でしょう。

[目次]
26歳の法則―まえがきにかえて
第1章 将来を暗示する26歳
第2章 もうひとつの時限爆弾型
第3章 世界を揺るがす26歳
第4章 挑戦の果実を得る26歳
第5章 音楽と年齢―ヒット曲と26歳
第6章 漫画家と年齢学
第7章 30代からの年齢学
第8章 革新させる38歳―バラエティ番組の考察
第9章 第X次開花時期の考察
第10章 経験としての26歳
結局のところの年齢学―あとがき

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2014.10.13

▽『かつて誰も調べなかった100の謎』――ホリイのずんずん調査

堀井憲一郎『ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎 』(文藝春秋)

1995年4月から2011年6月にかけて『週刊文春』に連載されていた「ホリイのずんずん調査」。792回分の調査の中から100を選んで採録し、さらに解説を加えたのが本書である。

多少おちゃらけたところはあるものの、社会調査の方法としては、割とまともなアプローチであり、意外な発見があったりする。

今回読んでいてビックリしたのは、「寿司を1カンと数えだしたのは、平成に入ってからである」というもの。昔は寿司は「1個、2個」と数えていたにもかかわらず、1990年代に雑誌の「ハナコ」と「ダンチュウ」を中心に「カン」が広まり始め、2003年にはすべての雑誌で使われるようになったという。知らんかった(笑)。

もう一つ面白かった調査は、アマゾンで本を買った時のランキングの変化を調べたもの。一冊買っただけで次のように順位は変動したそうです。

●43万→2万2796位
●14万→1万9140位
●5万9千→1万3535位
●3万2千→9120位
●2274→1707位
●352→323位

このほかにもいろいろと、ああそうなんだと思う調査が載っていますね。

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2014.10.01

▽ペン・シャープナーとは?――『調べる技術・書く技術』

野村進『調べる技術・書く技術』(講談社現代新書)

《いったい何のことかと思われるだろうが、ペン・シャープナーとは、文章のカンを鈍らせないために読む本や、原稿を書く前に読むお気に入りの文章のことだ。》(p.128)

本書『調べる技術・書く技術』は、ノンフィクションライターの野村進が、取材の仕方や執筆の際の心構えを、自分自身の体験や、実際に発表された文章などを例に引きながら解説していく。

著者の教えをそのまま実践できるかはともかくとして、入門書として必要なことは、十分カバーされている。

「ペン・シャープナー」については、ネットが普及して以降、雑な文章や煽るような文句を目にする機会がいっそう増えているだけに、常に優れた文章を読む癖をつける上でも有効なのかな、と思ったりもします。

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2014.09.21

▽福島の真実――『美味しんぼ』110巻

雁屋哲、花咲アキラ『美味しんぼ』110巻(小学館)

漫画『美味しんぼ』の登場人物たちが、2011年11月、2012年5月、同6月と三回にわたって、原発事故で放射性物資がばらまかれた福島県の各地を、取材した記録である。

今年の5月に話題を集めた「被爆と鼻血」のくだりは、本書には、収録されていませんが。

山岡士郎の東西新聞社と、海原雄山の帝都新聞社による共同取材というかたちで、福島市渡利地区、相馬市松川浦漁港、いわき市薄磯、会津の喜多方市、相馬原釜、喜多方市山都町、飯館村、南相馬市小高区、二本松市、伊達市、矢吹町などを訪れ、放射線量を測定し、地元の人の声を聞き、さらに、郷土料理を味わうという構成となっている。

漫画としての誇張はあるとは言え、腰を据えた取材の結果であり、十分に「福島の真実」を伝えられる立派なルポルタージュと言うことができます。

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2014.09.18

▽『偽悪者』――トリックスターたちの転機

上杉隆『偽悪者~トリックスターが日本を変える~』(扶桑社)

本書は、元ジャーナリスト(?)の上杉隆が、『週刊SPA』に連載したインタビューに加筆修正したものである。トリックスターとしての12人の「偽悪者」たちの、生い立ちや人生の転機などをを紹介したものである。

取り上げられた人々の幾人かの転機を紹介すると、

湯浅誠
《学部生の4年間は、ボランティアに明け暮れた。湯浅には障害のある兄がおり、ボランティアが自宅に出入りしていた。幼い湯浅は大学生になったら「恩返ししよう」と決めていたという。大学院に進んだ頃には、野宿者の支援を行うようになったが、支援活動に出掛けた渋谷でこの街に大勢のホームレスがいることを初めて知る。》(p.93)

竹田恒泰
《師事したのは、物理学者の藤田祐幸。スリーマイル島原発事故をきっかけに研究者としての成功に背を向け、立身出世をなげうち、市民とともに生きる在野の科学者として放射能の影響を世に訴え続けてきた人物だ。藤田と出会った竹田は、専門知識を修めるだけでなく、街に飛び出してフィールドワークを重ね、反原発の考えを一層強くしていった。》(p.130)

猪子寿之
《『新・電子立国』が放送された1995年、大学進学を控えた高校3年生の猪子はこれを観てショックを受ける。「このままでは日本の経済は衰退する一方だ……」。東京大学に入学したものの、「デジタル領域が全産業の中心になっていく」のなら、オールドエコノミーに属する大企業に「逆玉の輿」で潜り込んでも、もはや意味がなかった。大学を卒業した2001年3月、猪子は起業の道を選んだ。》(p.184)

[目次]
川上量生
(株式会社ドワンゴ代表取締役会長、スタジオジブリ・プロデューサー“見習い”)
「ネットの未来」とか「Web2・0」とか、偉そうに吹聴するIT業界の人が本当にムカついて……。
徹底的にバカにしてやろうと思った。

坂口恭平
(「新政府総理大臣」、建築家)
小学校のとき、すでに多数決では物事はうまくいかないというシステムの限界と戦っていました。

冨永愛
(モデル、WFP国連世界食糧計画・オフィシャルサポーター、国際協力NGOジョイセフ・アンバサダー)
日本ではアートとジャーナリズムが交わらないよね。

加藤嘉一
(国際コラムニスト、世界経済フォーラムGSC(グローバルシェイパーコミュニティ)メンバー)
無責任に我こそが愛国者と思い込んでいる者を僕は“愛国奴”と呼びます。

湯浅誠
(活動家、NPO法人反貧困ネットワーク事務局長)
「アクティビスト」のほうが当たりがいいのはわかるけど、敢えて「活動家」を名乗っているんです。

細野豪志
(民主党衆議院議員、元原発担当相)
大臣になってとか、総理になってとか……3・11以降、関心がなくなった。
政治家として使い捨てにされてもいいから、今できることをやる。

竹田恒泰
(作家、憲法学者、旧皇族)
私にとっては、左翼よりむしろ“エセ保守”のほうが敵。

ミサオ・レッドウルフ
(社会運動家、イラストレーター、反原発団体「NO NUKES MORE HEARTS」主宰)
当時行った野田首相との面会は、交渉決裂を演出したパフォーマンスでした。

津田大介
(メディア・アクティビスト、ジャーナリスト、インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事)
政治的に言いたいことはあまりない。ただ、子供の頃から政治的な環境と無縁ではなかった。

猪子寿之
(ウルトラテクノロジスト集団・チームラボ代表)
日本のように軍事力も資源もない国では、テクノロジーと文化が競争力の源泉になる。

朝比奈一郎
(青山社中株式会社筆頭代表)
日本の政党に何が足りないのかといえば、政策や人材をつくるシステムに尽きる。

乙武洋匡
(作家、東京都教育委員)
情報が溢れる今、普通の言い方では届かない。
敢て過激な言い方をして、ようやく人が振り向いてくれる。

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2014.09.12

▽朝日新聞の「従軍慰安婦」は史上最悪の大誤報だった!――WiLL

月刊WiLL2014年10月号『朝日新聞の「従軍慰安婦」は史上最悪の大誤報だった!』(ワック出版)

8月5日に朝日新聞が誤報を認めて、一部の記事を撤回した「従軍慰安婦問題」は、社長が引責辞任を表明する事態にいたりました。

この論争の争点は、ずっと前から明らかになっていましたので、さまざまな事態を悪化させた最大の要因は、やはり朝日新聞の決断が遅すぎたことにあると言わざるをえません。

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2014.09.11

▽「テレビが楽しくなくなった」――ロンブー淳

文藝春秋2014年10月号『総力特集:新聞、テレビの断末魔』(文藝春秋)

お笑いコンビ、ロンドンブーツ1号2号の田村淳が、文藝春秋2014年10月号の総力特集『新聞、テレビの断末魔』に「テレビが楽しくなくなった」というタイトルで寄稿している。

テレビ業界の過剰コンプライアンスがテレビをつまらなくしている、という問題意識から、政治に関心を持つようになった、と淳は語っている。その過剰コンプライアンスの一例として、次のようなものをあげている。

《中には、「『ハーフ』は駄目」という番組もありました。何と言い換えればいいかと聞くと、「『混血』と言ってください」。いやいや、ちょっと待て、と。そちらの方が言わないでしょう。「あ、君、混血だもんね」なんて気軽に言えないですよ。》(p.252)

田村淳は、安倍総理の地元である山口県出身であり、昭江夫人とも親しいという。

【ニコニコ動画】田村淳のNewsClab 2009年2月19日 ゲスト「安倍 晋三」

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2014.09.10

▽『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』

マシュー・アムスター=バートン『米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす』(関根光宏訳、エクスナレッジ)

本書は、『英国一家、ますます日本を食べる』と似たようなタイトルの本ですが、特に関係があるわけではなく、たまたまアメリカのフードライターが書いた本を、『英国一家~』の人気に便乗して翻訳したもののようです。

東京中野で暮らすことになったアメリカ人のフードライターが、ジャンクフードやコンビニの食べ物などの、日常的に日本人が食べているものについて綴っています。

『英国一家~』が、伝統的な和食を中心に扱っているのに対して、本書は、普通の日本人が日々食べているものを取り上げており、両者をあわせて読むと、面白さも増します。

原書"Pretty Good Number One: An American Family Eats Tokyo"は、日本の日常生活を英語で表現するとこうなる、という良い見本になっていまます。Kindle版も買えるようです。

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▽『英国一家、日本を食べる』

マイケル・ブース『英国一家、日本を食べる』(寺西のぶ子訳、亜紀書房)

マイケル・ブース『英国一家、ますます日本を食べる』(寺西のぶ子訳、亜紀書房)

この二冊は、英国人フードジャーナリストであるマイケル・ブース(Michael Booth)と、その一家が、日本の料理を食べ歩く旅行記である。『ますます~』は続編でなく、一冊目を翻訳する際に紙幅の都合で落とした章を、改めて収録したものです。

日本の伝統的な料理について簡潔な説明も加えられており、日本人が読んでも、楽しめる内容となっています。

"Sushi and Beyond: What the Japanese Know About Cooking"

また、原著は、和食や食材を英語でどう表現するかを理解する上で役に立ちます。

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2014.09.07

▽『ナタリーってこうなってたのか』

大山卓也『ナタリーってこうなってたのか』(双葉社)

ナタリーというポップカルチャーのニュースサイトがあります。
http://natalie.mu/

最近、KDDIの傘下に入りました。
http://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2014/08/22/603.html

その創設者が運営コンセプトなどを語ったのが、本書です。

ただ、書籍としてまとめられる前に、その他のネットニュースや対談、講演などで紹介されてきたエピソードも多く、本書から、あまり追加情報が得られるわけではありませんが……。

ナタリーの注目すべき点は、その網羅性の高さ。本書からではないのですが、

東京編集キュレーターズ
http://tokyo-edit.net/archives/31069454.html

より、少し引用すると

《実際にはどこにも肩入れしてない。ただ数をたくさん出してるだけなんです。
他のニュースサイトが1日10本から15本記事を出すところ、いまナタリーは
1日50本出してる。そうすると人は自分の好きなことしか目に入らないから、
「ああ、このサイトは自分の好きなジャンルを手厚くやってくれてる、味方なんだ」
っていうふうに幻想を持ってくれるの。》

[目次]
[プロローグ]不思議なサイトになったもんだ
[第1章]ナタリー前夜
ファンだから「もっと知りたい」
とにかく意識は低かった
「批評をしない」音楽サイト
「誰もやっていないなら自分がやるしかない」
「♪ピロリン」で決まった名前
一瞬で生まれた「ナタリー信子」

[第2章]とにかくコツコツやってきた
給料8万円の代表取締役
「ファン目線」が受け入れられた
ポップカルチャーの連峰を目指して
おやつナタリーの顛末
ずっとじわじわ続いている

[第3章]ナタリーがナタリーである理由
ナタリーがナタリーである理由
読者を信じるということ
無色透明でありたい
ナタリーに「載っているべきこと」
みっともないことはしたくない
基礎体力の大切さ
戦争の終わりを告げるニュースキャスター
過剰さを求める理由

[第4章]「やりたいこと」より「やるべきこと」
自分が読みたいインタビュー
「自分」がないのが自分らしい
ぬるいものはダサい
永遠に足りない
ウェブだからこそできること
ドヤ顔だけは見せたくない

[第5章]これからのナタリー
早すぎたチャレンジの数々
「新しさ」の次の価値
自分で見つけることの楽しさ
せっかくだから見てほしい

[特別対談]大山卓也ってこうなってたのか
津田大介×唐木 元

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2014.08.12

▽結局わかりませんでした――『日立製作所 川村改革の2000日』

小板橋太郎『異端児たちの決断 日立製作所 川村改革の2000日』(日経BP社)

2008年9月のリーマン・ショック後の2008年度決算では、7000億円もの連結最終赤字を計上する事態に陥った日立グループ。

これを機に経営体制は一新され、当時69歳の川村隆が社長兼会長に就任した。川村を中心とする「六人組」による構造改革が功を奏し、2013年度決算では、二十三年ぶりの営業利益の最高益を更新することができた。

この間に、日立グループが行った対策について記述しているのが本書である。

経営再建のロードマップは以下の四本柱によって立てられた(p.92より)。

(1)出血している事業のリストラ。近づける事業と遠ざける事業の峻別
(2)上場子会社を取り込み、社外に流出している利益を取り込む
(3)社会イノベーション事業で世界に出る成長戦略
(4)社内カンパニー制で事業部門を自立させる

こうした方針に沿って行われた日立再建の軌跡を、本書は追っているが、一つの大きな課題は未だ達成されていないことがわかる。それは、「御三家」と呼ばれる独立色の強い子会社三社(日立金属、日立電子、日立化成)の扱いである。

日立電線は日立金属と合併し、その布石として日立本体との経営陣の交流も行われてきた。しかし、ソニーやパナソニックが構造改革の際に断行した子会社の吸収合併は、日立においては未だ実行に移されていない。

《日立製作所が、日立電線と合併した日立金属と「御三家」のもう一角、日立化成をどうしようとしているのかはまだみえない。》(pp.152-153)

改革の途中でアベノミクスにより利益が急回復してしまっただけのようにも見えてしまいます。この改革は本物だったのか、結局よくわかりませんでした。

[目次]
【第一章】六十九歳の再登板
【第二章】「不沈艦」の黄昏
【第三章】裸になった経営陣
【第四章】「御三家」の換骨奪胎
【第五章】豪腕、中西宏明の凱旋
【第六章】インフラ輸出の牽引車
【第七章】グローバル化は隗より始めよ
【第八章】日立の次代を担う者

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2014.08.04

▽楽観主義の記録――『会社が消えた日』

大西康之『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(日経BP社)

2011年パナソニックに買収され、事実上消滅した三洋電機。約十万人いた社員のうち、パナソニックに残れたのは、一割にも満たない九千人余という。

本書は、三洋電機の再建努力とその失敗を軸に、元三洋電機の社員のその後を追ったものである。

一つの会社に長く勤めたことのあるサラリーマンならば、同情できる部分も少なくはないだろうが、しかし、端から見ていると、あまりにも楽観的過ぎたのではないか? と思わざるを得ない。

まず、2005年にTVキャスターの野中ともよを社長に据えた時代。経営の手腕や理念についてはさておいても、すでに三洋電機は創業一族である井植家の「公私混同」により蝕まれていた。

《無理な利益計上や不良在庫の山も大問題だったが、野中が愕然としたのは三洋電機と井植家の講師混同ぶりだった。どこまでが会社のカネで、どこからが井植家のカネなのか。よくわからないほど渾然一体となっていた。》(p.100)

パナソニックに買収された後のエピソードにも、失笑してしまうものがある。"Let' get together at Panasonic"という歌詞を含むパナソニックの社歌を歌えなかった元三洋の社員がいたという。

しかし、三洋電機のバッテリー部門を首尾良く手に入れたはずのパナソニックも、いまだに経営面で苦戦しているのも皮肉な話である。

[目次]
第一章 再会 井植敏は『ゼロ』を読んでいた
第二章 決断 中村邦夫はなぜ動いたのか
第三章 抵抗 野中ともよは「地球を守る」と言い放った
第四章 一歩 「ニーハオ」から始めよう――ハイアールに買われた人々
第五章 覚醒 こうやって黒字にするのか――京セラに買われた人々
第六章 意地 最後の1個まで売り切ってやる!――校長に転身したマーケター
第七章 謀略 私はこれで会社を辞めました――セクハラ疑惑をかけられた営業幹部
第八章 贖罪 「首切り」が私の仕事だった…――高額ヘッドハントを断った人事部長
第九章 自由 淡路島からもう一度――テスラを駆る電池技術者
第十章 転生 「離職者再生工場」の可能性――ベビーバギーを作る生産技術者
エピローグ ダウンサイジング・オブ・ジャパン

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2013.12.21

▽御曹司の二つの顔――『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』

井川意高『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(双葉社)

本書は、巨額の使い込みが発覚した元大王製紙会長の懺悔録である(2012年10月に懲役四年の実刑判決を受け控訴中)。

使い込みの原因がギャンブルだったこともあり、ほしのあきをはじめとする芸能人などとの交友録も含めて、御曹司の「裏の顔」が綴られている。

しかし本書の興味深いのはそれだけでなく、経営者としての「表の顔」もしっかりと語られている点だ。

大王製紙の創業家の三代目として、赤字部門の立て直しなどを任されるなど、経営者としては有能だったことが伺える。

《のちに私が東京地検特捜部に逮捕されてから、大王製紙からも多くの人間が取り調べに応じている。5000ページにも及ぶ検察調書を読むと、仕事のやり方について私の悪口を言っていた社員はいない。こればかりは素直にうれしかった。
「井川さん、あなたは仕事はできる人だったんですね」
 特捜検察官からも、苦笑交じりにそんな皮肉を言われ、複雑な気持ちになったものだ。》(p.104)

この「表の顔」と「裏の顔」がどうつながっているのかが、本書からは今ひとつ伝わらない。そこが残念と言えば残念である。

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2013.12.04

▽『別海から来た女』――悪魔祓いの百日裁判

佐野眞一『別海から来た女』(講談社)

通称がなんと言われているかよくわからないが、首都圏で婚活を悪用して詐欺や自殺に見せかけた殺人を連続して行った女性の犯人像にせまったルポである。

著者の作風についてはいろいろと取り沙汰されているが、そういう点を差し引いても、なかなか興味深く読むことができた。また、多くの被害者の抱えていたさまざまな「事情」も伺いしれた。

《この事件はそれと同時に、"妹(いも)の力"の偉大さも教えてくれた。木嶋の魔手から危うく難を逃れることができたのは、決まって姉や母が木嶋を見て出す"警戒警報"のおかげだったからである。
 この世には、木嶋のような女ばかりがいるわけではない。それがこの事件のせめてもの救いである。そう言うのは、あまりにもわびしい結論だろうか。》(p.273)

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2013.12.02

▽『家族喰い』――尼崎連続変死事件の真相

小野一光『家族喰い――尼崎連続変死事件の真相』(太田出版)

兵庫県尼崎市で発生した連続変死事件を追ったルポである。

この事件は、2012年10月にマスコミで大々的に取り上げられるようになったものの、本書によると、その一年前から一部のマスコミは大がかりな取材班をつくって裁判などをフォローしていたという。

2012年9月になって、一味の一人が自供をしたことから事件の全貌が明らかになったものの、11月に主犯が留置場で自殺(?)したことから、事件の謎はなんら解明されないままになってしまった。

本書では、報道された事実についての検証や新事実の発掘も多かったが、それでもなお多くの謎は残されたままである。

[目次]
プロローグ
第一章 角田美代子と裏稼業
第二章 グリコ森永事件との奇妙なつながり
第三章 親の愛に飢えた少女
第四章 非公然売春地帯への紹介者
第五章 最初の家族乗っ取り
第六章 警察の怠慢
第七章 美代子の暴力装置
第八章 被害者と加害者の父
第九章 谷本家の悲劇
第十章 自由への逃走、追跡後の悲劇
第十一章 崩れる大人たち
第十二章 さまようファミリー
エピローグ

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2013.12.01

▽『原発ホワイトアウト』

若杉冽『原発ホワイトアウト』(講談社)

本書は、現役官僚が正体を隠したままペンネームで発表したと言われている。小説としてのおもしろさはいま一つだが、ノンフィクションに近いものとして読むとなかなか興味深い。

本書に登場する「関東電力」は、市場価格よりも二割高い価格で取引先に発注し、その取引額の4パーセントを「東栄会」という組織にプールする。そしてその「東栄会」が、政治家やマスコミ、学者などの工作を行ってきたという。

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2013.11.30

▽検察惨敗の記録――『20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う!』

『20人の識者がみた「小沢事件」の真実―捜査権力とメディアの共犯関係を問う!』(日本文芸社)

本書は、今年の8月に出版されたものだが、手に取ったのは11月の中旬になってから。小沢一郎をめぐる事件も次第に記憶から薄れつつあるなか、何か「予感」がしたのかもしれない。

その後、医療法人徳洲会からの資金提供を受けたことで、現東京都知事の周辺が騒がしくなった。巷間伝えられるところによると、検察は政治家のからむ案件には腰が引けており、その遠因となっているのが、本書で詳述されている小沢一郎だけでなくその他も含めた一連の「検察の失態」にあると言われている。

また、本書の本題とは離れるが、興味深かったのが『週刊朝日』がテレビ番組「あるある大事典」の納豆ダイエットをめぐる捏造事件を追及したくだり。

《このスクープについて、他社の人からいちばんよく聞かれたのが「端緒は何だったのか」ということだった。企業の不祥事が発覚するのは、内部告発などの情報提供があることが一般的だからである。しかし、納豆ダイエットは違っていた。「素朴な疑問を取材によって検証する」という、ジャーナリストの基本動作を愚直に遂行した結果だった。》(p.256)

[目次]
序章 かくして検察の「政治的陰謀」は達成された(鳥越俊太郎)

第1章 被害者たちが証言する「国策捜査」の実態
 検察が潰れる「最大の弱み」を告発(三井環)
 「暴力組織」に成り下がった検察、「既得権益」にしがみつくメディア(仙波敏郎)
 権力とメディアの暴走を許さない(鈴木宗男)
 原子力帝国・全体主義国家に変貌する日本(佐藤栄佐久)
 日本の民主主義のため最後まで闘う(石川知裕)
 小沢裁判事件の評価と主権者がとるべき行動(植草一秀)

第2章 民主主義の危機、「検察」の暴走を検証する
 陸山会事件における検察の暴走とメディア(郷原信郎)
 法務・検察官僚に組織としての正義はあるか?(川内博史)
 政治的冤罪事件「小沢ケース」の奇々怪々(有田芳生)
 検察の暴走と「指揮権発動」の真相(小川敏夫)
 検察の暴走・司法の崩壊に、市民に何ができるか(八木啓代)
 暴走検察の背後にある刑事司法の巨大な歪み(青木理)

第3章 なぜ、大メディアは「検察」の暴走に加担したのか
 革命的改革を阻止した官僚と、それに手を貸したマスコミ(高野孟)
 「アンチ小沢という空気」の正体(二木啓孝)
 「週刊朝日」と大手メディアの違いはどこから生じたのか(山口一臣)
 民主統制なき刑事司法に、メディアが最後の砦となれないことの悲劇(神保哲生)
 小沢事件をメディアはどう報じてきたか(浅野健一)
 官僚機構の一部と化したメディアの罪(マーティン・ファクラー)

終章 権力の暴走とメディアの加担ー小沢問題の意味を問う(木村朗)

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2013.10.19

▽金爆とは――『評伝 ゴールデンボンバー』

川久保孝一『評伝 ゴールデンボンバー』(アールズ出版)

私がゴールデンボンバー(通称「金爆」)について知ったのは、割と、最近のこと。それも、T.M.レボリューションこと西川貴教が、任天堂WiiのTVCMとしてゴールデンボンバーの曲を歌っている動画を見たのがきっかけ(これもだいぶタイムラグがある)。

その歌「女々しくて」は、なんと2012年から2013年にかけてカラオケランキング上位をつねに占めていたらしい(知らんかった)。

しかも、ゴールデンボンバーのボーカル鬼龍院翔は、「仮面ライダーウィザード」のオープニング曲も歌っていた(こっちは知っていたが結びつかなかった)。

さらに、このゴールデンボンバーは、演奏している振りをしてるだけのエアバンドなんだそうだ(な、なんだってー)。

さらに、吉本NSC出身でお笑い志望だったこともあり、2009年からはニコニコ動画におもしろ動画を投稿していて知る人ぞ知る存在だったらしい(ニコ動は初期からユーザーだったけど、これもまったく知らんかった)。

さらに、「女々しくて」のヒットは、セルフパロディ版の「眠たくて」がテレビCMに使われたことがきっかけだっそうだ(ま~ったく知らんかった)。

というわけで、私は、金爆のいない世界から来たようです。これだけ情報の流通が自由な時代に、こんなこともあるんですね(笑)。

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▽堀潤ミーツNHK

堀潤『僕がメディアで伝えたいこと』(講談社現代新書)

堀潤という異色のアナウンサーがNHKに入局してから辞めるまでの紆余曲折を綴ったもの。

もともとはアナウンサーよりも週刊誌の記者を志望していたこともあって、いくつかの事件取材ではスクープもものにしている。

しかし、福島原発事故におけるNHKの報道のありようや、その後に留学したアメリカで自主製作したドキュメンタリー映画などのトラブルをきっかけに、NHKを辞めてしまう。

ジャーナリストとしての資質の高さも伺える堀潤の明日はどっちだ?

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2013.10.18

▽『自民党と公務員制度改革』

塙和也『自民党と公務員制度改革』(白水社)

《公務員制度改革のような多様な利害が絡み、抵抗勢力が自らの足元の官僚機構である場合、いくら渡辺や甘利などの行革相が奮闘しても、法案の成立という大事までは成し得ない。繰り返しになるが、中曽根や橋本の行革も首相自身のリーダーシップによって成し遂げられている。……不況時の経済対策のような誰もがその必要性を認識する政策を打つことは官僚の抵抗という点では摩擦は少ない。首相の力量はまさに、公務員改革のような分野においてこそ「最終裁定者・総合調整者」として問われるのである。》(p.291)

本書は、自民党による公務員制度改革に焦点をあてたものであり、福田、麻生と続く二つの政権において、それぞれの行革相であった渡辺喜美と甘利明の行動にスポットを当てたものである。

福田政権の2008年に設置された「内閣官房国家公務員制度改革推進本部」は、五年後の2013年7月に、公務員改革の成果をあげることなく設置期限切れで廃止された。

まさに、抵抗勢力おそるべしである。

[目次]
序章 三年坂
第一章 日暮里
第二章 修正協議
第三章 10森
第四章 投げ出し
第五章 内閣人事局
第六章 人事院
第七章 離党と政令
第八章 格付
第九章 公務員政局
第十章 十二兆円
第十一章 幻の法律案
終章 厚労省大臣室
あとがき/参考文献/資料集

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2013.10.17

▽『原発事故と科学的方法』

牧野淳一郎『原発事故と科学的方法』(岩波科学ライブラリー)

《当時の私の気分を振り返ってみると,現実に起こるはずのない悪夢の中にいるような気がしていました.この悪夢は少なくとも三重のものでした.最初は,起こってほしくなかった原発の重大事故,第二は,東京電力と政府の発表,マスコミでの報道や解説が事態をまったく過小評価するものであったこと,第三は,知人の物理系などの研究者を含めて,ネット上での論調のほとんどがこの過小評価を支持し,客観的な現実認識をこばむもののように見えたことです.》(p.9)

本書は、天文学を専門とする著者が、福島原発事故当時に、twitterやウェブサイトに書いたものを再構成したものである。

原子力発電や過去に起きた事故に関する基礎的な知識と、当時得られたデータから、福島原発事故の推移や放射性物質拡散の予想など行った記録であり、結果としてみれば著者の推定はおおむね当たっていたことがわかる。

「科学的方法」とは何かということを改めて教えてくれる一冊である。

[目次]
序章 3.11から最初の一週間―三重の悪夢のなかで
第1章 原発事故の規模―自分で考えるための科学的方法
第2章 事故のシミュレーションはなされていた―まかり通った大嘘
第3章 専門家も政府も、みんな間違えた?―あるいは知っていて黙っていた?
第4章 原子力発電という巨大リスク
第5章 福島原発事故の健康影響をどう考え、それにどう対応するか
結びに

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2013.09.15

▽『いつも一言多いあのアナウンサーのちょっとめったに聞けない話』

長谷川豊『いつも一言多いあのアナウンサーのちょっとめったに聞けない話』(小学館)

ニューヨーク駐在時代に、「横領」の濡れ衣を着せられた民報テレビ局のアナウンサー。日本への帰国命令が出され、アナウンサー職は解かれ、「著作権部」へと左遷された。週刊誌やネット・ニュースでは、「アナウンサーの横領事件」として大々的に報道された。

しかし、「懲罰委員会」の運営方法のおかしさや、社内情報を漏らす人物の存在に気づいた彼は、自分がねらい打ちにされたのではないか、という疑念を抱くようになる。

そして――。

放送局を退社した彼は、自分のブログを使って、自分を陥れた人物への報復を開始する――。

スリリングなビジネス小説のような展開ですが、これは本書に書かれている通りの内容です。実際の文章は、もっと砕けているんですけどね。

ネット社会の一面も綴られていて興味深く読みました。

[目次]
序章 フジテレビを訴えれば済む話か?
ご挨拶 「長谷川豊がお伝えします」
第1章 「はせっち!」―僕がアナウンサーを目指したわけ
第2章 「ジャニ顔を選べ!」―僕は「伝えたい」と思った
第3章 ライブドア騒動と『まる生』事件
第4章 アナウンス室の立場
第5章 「僕でよければ行きましょうか?」
第6章 マイクを奪われた日
第7章 最後の取材活動へ
第8章 真相の深層
第9章 この本の読者の皆様にお届けするもう一つのリポート
終章 そして明日へ―マイクを取り戻した日

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▽『鎮魂』――さらば、愛しの山口組

盛力健児『鎮魂 ~さらば、愛しの山口組』(宝島社)

元暴力団員である著者が、山口組の内情について語ったもの。

ここでは、記憶に残っている二つの事件についての記述を紹介したい。

●1996年7月10日 京都府の理髪店で中野太郎・中野会会長(五代目山口組若頭補佐・当時)らが銃撃される。しかしボディガードが応戦したため、襲撃犯のうち二名が射殺され、中野会長は無傷だった。

その後、山口組と襲撃した会津小鉄会は手打ち。このスピード和解について著者は、

《山口組が(中野襲撃を)了承しとったからですよ。あの散髪屋の(中野襲撃)事件は、宅見が会津にやらせよったんや。宅見が仕組んだんですよ。》(p.203)

●1997年8月28日 神戸市のホテルで宅見勝・山口組若頭(当時)らが銃撃され、宅見と流れ弾に当たった医師が死亡。山口組は、襲撃した中野会を「絶縁」し、中野会は、2005年に解散した。

2005年6月に、山口組内でクーデターが起きた。

《五代目は中野(太郎・中野会長)が宅見(勝・若頭)を殺すのをどこかの時点で“了承”しとった。弘道会はその証拠をつかみよったんや。》(p.246)

[目次]
第1章 大阪戦争
第2章 報復
第3章 血統書つきの野良犬
第4章 山健三羽カラス
第5章 懲役16年
第6章 出所
第7章 「宅見若頭暗殺事件」の深淵
第8章 「クーデター」の真相
第9章 さらば、山口組

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2013.09.14

▽『原子力ムラの陰謀』――機密ファイルが暴く闇

今西憲之+週刊朝日編集部『原子力ムラの陰謀: 機密ファイルが暴く闇』(朝日新聞出版)

1995年に起きた高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏れ事故の際に、謎の死をとげた動燃(現在は日本原子力研究開発機構)幹部が残した膨大な資料によって明るみにされた事実。

それは、1990年代に行われた原子力ムラによる、住民工作、思想調査、マスコミ・政界対策、選挙などの存在を裏付けるものだった。

その実態は本書を読んでいただくとして、西村氏の死について、ちょっと気になる記述がある。西村氏の妻であるトシ子は、夫の死について、「疑念」を抱いていることがわかる。

《トシ子さんは、T氏から〈西村職員の自殺に関する一考察〉という文書を渡された。T氏が西村氏の死の原因について考えをまとめたものだった。……
 そこには「勘異い」という、なぜか遺書と同じ「誤字」が使われていた。
 トシ子さんの疑念は、さらに深まった。》(p.307)

[目次]
プロローグ―「3.11福島原発」の序曲 それは「もんじゅ」事故から始まった
第1章―ウランの里「人形峠」で行われた戦慄の住民思想調査
第2章―動燃裏工作部隊「K機関」を暴く
第3章―梶山静六を大臣に押し上げた原子力ムラ組織ぐるみ選挙
第4章―科学技術庁が指示したNHKへの「やらせ抗議」
第5章―プルトニウム輸送船「あかつき丸」の日米密約
第6章ー動燃「工作」体質の起源
第7章―「もんじゅ」事故前夜の「安全神話」
第8章―もんじゅ事故「隠蔽」極秘記録と西村氏「怪死」の真相
あとがき

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2013.09.11

▽『関東連合』――六本木アウトローの正体

久田将義『関東連合:六本木アウトローの正体』(ちくま新書)

名前こそ広く知られるようになったものの、謎のベールに包まれた『関東連合』について、「日刊ナックルズ」の編集長でもある著者が、可能な限りその実態に迫ったものである。

その詳細は、本書に譲るとして、「関東連合」のおおざっぱな歴史を記しておこう。
そもそも「関東連合」は、1973年に暴走族の連合体として結成された。しかし、この1970~80年代の「関東連合」は、現在の「関東連合」とは、かならずしも同じ団体ではないという。

その後、道路交通法の改正などにより暴走族は勢いを失い、これとは別の不良少年の系譜である「チーマー」が、渋谷などを席巻するようになる。しかし、このチーマーと、関東連合系の暴走族との間で、抗争が勃発する。1991年に発生したいわゆる「三茶事件」と呼ばれる抗争の結果、チーマーは渋谷から一掃され、暴走族が優位になる。

そして、1990年代に入って、初期の関東連合に参加していた「上町小次郎」という暴走族が「関東連合上町小次郎」と名乗ることによって、「関東連合」が復活する。これが、現在の「関東連合」の源流であり、六本木進出の契機となったようだ。

そして、様々な事件を通じて「関東連合」の名が一般にも広まるようになる。まず、2000年に発生した東洋ボール事件、2008年の西新宿撲殺事件、2009年の男性俳優の薬物に絡んだ事件、2010年の歌舞伎役者殴打事件と横綱による暴行事件、2012年の六本木フラワー事件などである。

本書で記されていることが、「関東連合」のすべての真相では無いにしても、おおよその姿を描くことには成功しているように思われる。

[目次]
はじめに

序 章 闇社会の入口へ
 どうしても断れない先輩
 地下格闘技の闇
 殺す気で殴る
 闇社会の扉
 アウトローのヒエラルキー

第一章 関東連合の歴史
 資料はほとんどない
 関東連合、過去と現在
 70年代、関東連合の誕生
 関東連合は誰が作ったのか
 巨大暴走族の序列と人間関係
 現在の暴走族スタイルを確立したあるチーム
 走り集団から喧嘩集団へ
 大井ふ頭事件
 暴走族特有の意識

第二章 チーマーの出現
 不良少年とバブル
 不良少年と漫画
 ギミックの不良観
 不良デビュー
 チーマーはなぜ誕生したのか
 アメカジから渋カジへ
 チーマーの象徴としての明大中野高校
 チーマーのディスコグラフィ
 チーマー・タイプの方程式

第三章 武闘化するチーマー――三茶抗争と関東連合の台頭
 ものを言うのは出身校
 武闘派チーム
 チーマーのファッションリーダー
 とりあえず楽しくメチャクチャやろうぜ
 三茶抗争の勃発
 三茶事件、当事者の証言
 和解へ向けた動き
 チーマーがいなくなった後のチーマーたち

第四章 関東連合の復活
 覆された暴走族イメージ
 世田谷の暴走族「小次郎」
 抗争の時代
 喧嘩で名を売る
 新生・関東連合の台頭
 豊富な資金力の一端
 団塊ジュニア世代
 ヤクザになるのが得ではない時代

第五章 六本木進出
 芸能マスコミ報道の幻想
 明るい芸能界の暗い舞台裏
 六本木進出

第六章 六本木フラワー事件
 動機はデモンストレーションか
 人違い説とトラブル説
 「関東連合の実態は分かってきた」
 犯行は杉並のグループ
 フラワー事件の影響

第七章 人脈
 グレーゾーンの定義
 クラブという存在
 クラブから広がる人間関係
 芸能界人脈
 関東連合の人脈をどう見るか
 ネットによる誇張
 幻想の巨大化

第八章 裏社会の地殻変動
 オレオレ詐欺
 唐突な幹部の出頭
 ヤクザから見た関東連合の現在
 都市型ギャング
 変わる繁華街
 大阪の不良集団「強者」
 追い込まれてきたか

あとがき

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2013.09.06

▽「イタリア」誕生の物語

藤澤房俊『「イタリア」誕生の物語』(講談社選書メチエ)

現在のイタリアが誕生したのは1861年である。

これは日本の明治維新のわずか七年前の出来事にすぎない。当時の世界は、それぞれが国民国家を生み出すプロセスのまっただ中にあったのだ。

統一される前のイタリア半島には、サルディーニャ公国、ジェノヴァ共和国、ヴェネツィア共和国、モデナ公国、パルマ公国、トスカーナ大公国、教会国家、ナポリ王国、ミラノ公国などがあった。

統一後のイタリアは立憲君主制としてスタートしたが、ファシスト政権を経て、現在は共和制となっている(イタリアは政権が安定しないことでも有名なんですけどね)。

本書は、「リソルジメント」と呼ばれるイタリア統一運動をヨーロッパの国際関係と絡めつつ描いた力作である。イタリアの地名などに通暁していないと、ちょっとわかりにくいかな、と思われる点もありますが……。

[目次]
第1章 「自由の木の酸っぱいけれども甘い果実を味わった最初の国」―一七九六~一七九九年
第2章 皇帝ナポレオンのイタリア支配―一八〇〇~一八一四年
第3章 不安定な王政復古体制
第4章 秘密結社運動から政党の運動へ
第5章 革命ではなく改革を目指した穏和派
第6章 イタリアの長い「一八四八年革命」
第7章 リソルジメントの国際化
第8章 職人的なイタリア統一
第9章 半島の名前から民族の名前となったイタリア
第10章 「クォー・ヴァディス、イタリア」―「おわりに」にかえて

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2013.09.05

▽『戦力外通告』――プロ野球選手たちの第二の人生

遠藤宏一郎『戦力外通告』(朝日新聞出版)

本書は、戦力外通告されたプロ野球選手たちのその後を追ったルポルタージュ。もともとはTBSの番組として制作されたものをベースに書籍としてまとめられた。

本書では七人の元プロ野球選手が取り上げられているが、あまりプロ野球に詳しくない私にとっては、ドカベン香川こと香川伸行くらいしか名前と活躍ぶりを知っている選手はいなかった。

その香川のその後ですら、なかなか大変な人生を送っていたことを本書で初めて知ることになった。プロ野球選手にかかわらず、「第二の人生」がいかに大変なのか、そして、多くの元プロ野球選手がたくましいか、について知ることができる。

[目次]
1章 タイガースの四番という重責を越えて―濱中治
2章 退路を断った一世一代の大勝負―平下晃司
3章 格闘技というまわり道からの挑戦―古木克明
4章 少年に野球の楽しさを教えたい―河野友軌
5章 二軍コーチの仕事を支えた出会い―黒田哲史
6章 元メジャーリーガーの次なる人生―福盛和男
7章 夢をくれたドカベンの新たな夢―香川伸行

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2013.08.23

▽『現代オカルトの根源』――霊性進化論の光と闇

大田俊寛『現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇』(ちくま新書)

《この世は不可視の存在によって支配されているとするオカルティズムの発想は、楽観的な姿勢としては、人類は卓越したマスターたちに導かれることによって精神向上を果たすことができるという進歩主義を生み出し、悲観的な姿勢としては、人類は悪しき勢力によって密かに利用・搾取されているという陰謀論を生み出す。》(p.160)

本書は、ヨーロッパ、米英、そして、日本におけるオカルティズムの諸相を通覧する。それぞれのオカルティズムの、おおざっぱな性格や歴史的な経緯はわかるものの、紙幅の関係もあって、記述はやや物足りない。

[目次]
はじめに

第1章 神智学の展開
 神智学の秘密教義―ブラヴァツキー夫人
 大師のハイアラーキー―チャールズ・リードビーター
 キリストとアーリマンの相克―ルドルフ・シュタイナー
 神人としてのアーリア人種―アリオゾフィ

第2章 米英のポップ・オカルティズム
 輪廻転生と超古代史―エドガー・ケイシー 
 UFOと宇宙の哲学―ジョージ・アダムスキー
 マヤ暦が示す二〇一二年の終末―ホゼ・アグエイアス
 爬虫類人陰謀論―デーヴィッド・アイク

第3章 日本の新宗教
 日本シャンバラ化計画―オウム真理教
 九次元霊エル・カンターレの降臨―幸福の科学

おわりに 239
主要参考資料一覧 246

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2013.08.03

▽TPPは、終わりの始まりなのか?――「ネットの自由」vs.著作権

福井健策『「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか』(光文社新書)

本書は、日本政府が、現在交渉参加中のTPPについて、主に知的財産の分野がどうなるか、について焦点を絞ったものである。

著者の見立てでは、知財分野におけるTPPとは、「ルールのアメリカ化」であり、「知財の強化」であるという。

[目次]
第1章 「SOPAの息子たち」
第2章 TPPの米国知財条項を検証する
第3章 最適の知財バランスを求めて
第4章 情報と知財のルールを作るのは誰なのか
あとがき
(巻末資料)TPP米国知財要求抄訳
主要参考文献
索引

[参考]
▽知的財産権侵害を防ぐのが狙い――『TPP 知財戦争の始まり』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/03/post-b01d.html

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2013.07.25

▽いびつな絆――『関東連合の真実』

工藤明男『いびつな絆 関東連合の真実』(宝島社)

さまざまな事件でマスコミをさわがせる「関東連合」。その関東連合の元幹部が、組織の実態を明かす手記が本書である。

インターネットの世界でも関東連合に関する逸話は、虚実とりまぜ氾濫している。

ペンネームの「工藤明男」は、巨大掲示板2ちゃんねるに、関東連合の幹部の名前としてしばしば書き込まれる「工藤明生」をもじったものという。著者によると、「工藤明生」なる幹部は存在しないという。

2ちゃんねるに書き込まれた情報をもとに、警視庁が関東連合の間違った組織図を作成したこともあったという。著者の感触では、

《名前や所属団体などの肩書きは、半分が事実だが、関東連合に関係していると言われる事件のエピソードや情報は、その半分以上が妄想という印象だ。》(p.178)

[目次]
第1章 六本木クラブ襲撃事件
第2章 歓楽街のギャングスター
第3章 ビッグマネー
第4章 朝青龍、海老蔵―六本木・西麻布コネクション
第5章 いびつな絆
第6章 東京アウトレイジ

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2013.07.09

▽『ウルトラマンが泣いている』――円谷プロの失敗

円谷英明『ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗』(講談社現代新書)

ウルトラマンをつくった円谷プロの盛衰をつづったもの。

著者の円谷英明は、ウルトラマンの生みの親である円谷英二の孫であり、円谷プロの六代目社長を2004年から一年間だけつとめた。

現在の円谷プロからは、紆余曲折を経て、パチンコメーカーのフィールズ傘下にあり、経営陣から円谷一族は一掃されている。

キャラクタービジネスとしてのガンダムや仮面ライダーが、時代の風雪に耐えながらも生き残ってるのに対し、ウルトラマンの失敗はその反面教師ともいえる。

いろいろな面で示唆に富む一冊といえる。

[参考]
▽タイのウルトラマンの憂鬱
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/01/post-f92c.html
▽ユリイカ総特集『平成仮面ライダー』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/08/post-0fe4.html

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2013.06.03

▽星新一『夜明けあと』

星新一『夜明けあと』(新潮文庫)

《文久二年(一八六二)
 在日米国使節の印象。日本人は貿易による利益を知らず。品物の輸出で、民衆は日用品不足。貧者は困窮。交易にむかない国民性のようだ(海外新聞)。》

SFなどのショートショートで知られる小説家の星新一が、明治維新後の日本の移り変わりを、当時の新聞記事などをもとにしても散文的に紹介していくという試み。

歴史の教科書に載るような事件ではなく、もっぱら市井の人々の暮らし向きなどに関わることの紹介が多く、「へぇ~」や「くすっ」と楽しめること請け合います。

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2013.05.23

▽『悪韓論』

室谷克実『悪韓論』(新潮新書)

挑戦的なタイトルの本書は、時事通信の記者として、韓国のソウル支局に勤務した著者が、韓国の実態をできるだけ現実に即して描こうとしたものである。

その特徴は、著者の独断ではないことを示すために、《韓国の公式統計や韓国の「権威ある」マスコミ報道を、主たる典拠にした点だ。》(p.7)

感情的な礼賛でもなければ、嫌悪でもない、公式のデータに基づいた韓国論の決定版である。

ただし、日本と韓国は、文化的にも社会構造的にも似た部分は多く、本書の記述を、単にお隣の国の出来事と笑ってすませられないのも事実だろう。

[目次]
はじめに

序章 李王朝の昔から続く宿痾
 滅私奉公とは逆の価値観
 儒教は武器、儒教に基づく政はなかった
 水の漏れない桶・樽も作れなかったので
 「君子不器」の精神で世は回る

第一章 韓国コンプレックスに陥ることなかれ
 韓流オバさんの世迷言
 教育熱強国であることは間違いない
 法定最低賃金を守らなくても処罰されない国
 失業率優等生国、その統計の「裏側」 
 「サムスン財閥」の雄姿に潜む歪み

第二章 格差王国の身分制度
 大卒でなければ人間扱いされない
 大手財閥系はブルーカラーも高給
 オフィスの人口密度が違いすぎる 
 「大部屋重役」のいない国
 一社に社長が十六人!?
 進歩的労組が“職場世襲”を要求

第三章 就職浪人大国の悲惨
 大卒新入社員の平均年齢は二十八歳超
 国民の〇・六%が「留学ないしは遊学中」
 米国には韓国人専用大学が!?
 兵隊のライタイハンの次は留学生のコピノ
 大学を出ても半数は職がない
 「学歴過剰大国」症は昂進する
 「ニート大国」症候群も悪化する
 カップラーメンと焼酎で「消日」

第四章 短期退職者が溢れる国に匠はいない
 「超」短期退職者がいっぱい
 一番人気・最も尊敬される企業でも
 どんな汚い術を使おうと勝てばいい
 鉄拳制裁健在、七三%が“会社うつ病”
 四十五歳定年の仕組み
 最高のバイトは事務補助、最低は……
 生産職は定年延長、事務職には希望退職
 ヒムドゥロヨとケンチャナヨの大合唱

第五章 長時間労働大国の怠慢
 OECD労働統計の罠
 「韓国人は勤勉」とは外国人観光客向け
 自分の苗字も漢字では書けない
 ソウルの板長が吠えた
 怖いからKTX乗車はご遠慮致します

第六章 嘘吐き大国は《外華内貧》で老人自殺大国
 韓国紙にここまで載っているのに
 嘘を重ねて自縄自縛になると
 大統領夫妻が美容整形した輝かしい歴史
 結婚「式」だけの費用が年収を上回る
 子育てと産業化に邁進した高齢者は今

第七章 詐欺大国の上に訴訟大国
 「謝罪させたい」という欲望
 保険金詐欺は医師の協力が不可欠
 交通事故の入院率五八・五%、日本の九・五倍
 請求権、詐取を企図して詐欺に遭う
 「犯罪大国」でもある
 国民の一%超が年に一回告訴する国
 国際法廷を逃げ回る訴訟大国

第八章 高級マンションはヤミ金大国の象徴
 世にも不思議な伝貰というシステム
 ヤミ金市場があるから成り立っている
 「資金の出所は一切問わない」と呼び掛けた軍事政権
 本当は博打大国
 静かな下落で「損切り」できないまま
 リーマンショックを奇貨としたウォン安操作
 関心事は給料日とカード決済額
 家計負債という時限爆弾

第九章 お笑い欺術大国、だから原発が恐ろしい
 就職のために金を払うか――イエス三〇%超
 月給の何倍も稼げるから
 原発「不正部品」納入の闇
 「技術大国」ではなく「欺術大国」
 超公然たるキックバックの手法があった

第十章 恩赦大国に腐臭なき人はいるのか
 「民・民汚職」の常識
 警察官とは、昔から悪い人の代名詞
 朴槿恵が首相候補に指名した元憲裁所長も
 お笑い「就任二十五周年記念でグループ内恩赦」

第十一章 韓国型生活様式が内包する売買春天国
 ソウル特派員はなぜ送稿しなかった
 傷痕だらけの「性史」が今も続く
 専業売春婦と副業売春婦
 老人には老人専門売春婦が偽バイアグラで
 「システムを輸出、人員も派遣」で悪の世界拡散
 文明終末の様相、ここにあり

終章 「大国」「強国」だらけのウリナラ
 ついに「グレート・コリア」の主張が出た
 総合でも「大国」になってしまった
 李王朝時代より進歩したのか

おわりに

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2013.04.23

▽破産した自治体再建の実態――『医療にたかるな』

村上智彦『医療にたかるな』(新潮新書)

2006年6月に財政破綻が明らかになった北海道夕張市――。

かつては炭坑の街として栄えた夕張市が財政破綻した後に、その夕張市の医療再生を担った著者が、どこに問題があったかについて率直に述べたものである。

《北海道の人間にとって、かつて夕張と言えば「もっともお金持ちで栄えている地域」でした。……落盤事故が起こるのは事実ですが、危険な作業への代償として、労働者たちは下にも置かぬ扱いを受け、家賃や暖房費はもとより、光熱費、水道代といった公共サービス、はては映画館の入場券まで、すべて無料で提供されました。もちろん医療費もすべて無料です。……この頃に、夕張の人たちは「何でもかんでも会社が丸抱えで生活の面倒を看るのが当たり前」という生活に慣れてしまい、歪んだ権利意識を持つようになってしまったのです。》(pp.77-78)

いったん身についてしまった「たかり体質」は、容易にぬぐい去れる物ではないことが、本書を読むとよくわかる。

[目次]
はじめに

第1章 日本の医療はなぜ「高い」のか?
1.「医療費が高い地域」に同情するな
過剰医療への宣戦布告/医療過疎地での診療所開業/日本一医療費の高い町
2.健康意識は「施し」からは生まれない
「ケア」と「キュア」/患者を減らす方法/一次予防がもっとも安い/注射信仰を逆手に/行政の動かし方/格差をつければ公平になる/保険制度とフリーアクセス/「施し」は逆効果
3.医療施設では人の健康は守れない
日本一医療費の安い地域/医療と寿命は無関係/生活習慣こそが問題/予防医療を阻むもの
4.医療批判に隠された「ごまかし」
フィンランドへ/北欧型の福祉政策/高福祉高負担への批判は正当か/医療亡国論のデタラメ/アメリカ型医療には反対/日本の医療は世界一/検査マニアの勘違い/恥知らずの高齢者たち

第2章 医療を壊す「敵」の正体
1.夕張を破綻させた「たかり体質」
北海道の土地柄/北海道人の気質/北海道の医療の特徴/夕張市の真実/“炭都”で育まれた「たかり体質」
2.既得権益を死守する「政治」「行政」
四面楚歌の夕張入り/決断しない政治/無責任な行政/夕張を蝕んだ労働組合/醜悪な権益確保
3.「マスコミ」の自作自演構造
マスコミの習性/救急拒否事件の真実/ウェブ雑誌の反論手記/思考停止が生み出す自作自演
4.責任回避と権力欲に走る「医療者」
医療関係者のリスク恐怖症/縦割りとリスク回避の構造/権力欲に転ぶ人たち/若月先生も妨害された/官がいいか民がいいか/オランダのビュルトツォルホ
5.「市民」という名の妖怪が徘徊する
歪んだ権利意識/夕張市民の非常識/「ニーズ」と「ウォンツ」/ニーズはアンケートで決めるものではない/「知らなかった」は免罪符にならない/自立した市民とは

第3章 「戦う医療」から、「ささえる医療」へ
1.高齢者医療は「死」を前提に組み立てよ
人は必ず死ぬ/「戦う医療」の限界/「胃ろう」は是か非か/家族との話し合い/口腔ケアの知られざる効果/リスクと向き合う/カリフォルニアの親戚
2.医療を超えた「ケア」を実践せよ
「ささえる医療」とは/老健と在宅医療/在宅の驚くべき効果/コミュニケーションが大事
3.行政への「丸投げ」は卒業せよ
厚生労働省の医療行政/制度は現場から変える/病院死と在宅死/孤独死の問題
4.日本人よ、「公」になれ
「ささえる医療」の担い手/まずは見学から/斜めのつながりを/公の精神

おわりに

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2013.04.06

▽『参謀』――落合監督を支えた右腕の「見守る力」

森繁和『参謀―落合監督を支えた右腕の「見守る力」』(講談社)

落合博満が監督として中日を率いた8年間の間、その右腕として活躍した森繁和ヘッドコーチの回顧録。ベストセラーとなった落合監督の『采配』とあわせて読むとおもしろい。

また、現役時代の落合が、さほど交流のなかった森繁和を右腕として抜擢したのか? についても明かされている。なんと、森が西武時代にGMとして指揮をとっていた根本陸夫が、落合に「あの野郎、おもしろいぞ、使うと。おまえみたいなヤツが使うとけっこう」(p.47)と推薦していたのだという。

[参考]
▽落合監督ご苦労様でした――『采配』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2011/11/post-ddf4.html
▽落合博満伝説
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/11/post-e860.html
▽落合が語るコーチング術
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/01/post-c1b2.html
▽『落合戦記』――すべてはここからはじまった
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2012/03/post-b367.html
▽『10・8』――巨人VS.中日 史上最高の決戦
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2013/03/108vs-9242.html

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2013.04.05

▽『未解決事件 グリコ・森永事件』

NHKスペシャル取材班『未解決事件 グリコ・森永事件~捜査員300人の証言』(文藝春秋)

劇場型犯罪のさきがけと言われた「グリコ・森永事件」。

すでに時効を迎えた未解決事件を、27年の時を超えて、NHKスペシャル取材班が、ふたたび、その真相に迫る……という意気込みは良いのですが、特に、大きな新事実の発見があったわけでもなく、ちょっと肩すかしな内容でした。

事件を振り返る企画としては悪くないのですが、ちょっと物足りないかも。

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2013.03.27

▽仮出所なう。

堀江貴文『刑務所なう。』(文藝春秋)

本日、仮出所となったホリエモンこと堀江貴文。

いまの自民党政権の高い支持率と株式市場の活況という政治・経済状況は、ライブドアが強制捜査を受けた時期(2006年1月)ときわめてよく似ています。

なんだかタイムマシンで、あの時代に引き戻されたような感じがします。

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2013.03.25

▽ローカル線で行こう

真保裕一『ローカル線で行こう』(講談社)

《廃線間際の赤字ローカル線。
故郷(ふるさと)の未来を託されたのは、
たったひとりの新幹線アテンダント――》(帯より)

赤字ローカル線の実態がよく描かれていて、読み物としても、痛快でした。

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2013.03.24

▽社会調査法vs疫学・生物統計学――『統計学が最強の学問である』

西内啓『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)

やや、煽り気味のタイトルなので、お手軽なハウツー本のような印象を持つが、内容はいたってまじめで、統計学の基本事項を学ぶことができる。

本書の主眼は、統計の技術的な手法を伝授するためのものではなく、統計学の歴史的な成り立ちや、さまざまな統計手法の解説を行う点にある。

とくに、統計的手法を使うさまざまな学問において、その使い方の違いが原因となる対立も生じているという。

《疫学者や生物統計家は、「ランダムサンプリングによる正確な推定値」よりも、「ランダム化による妥当な判断を大事にする。そしてたまに社会調査を中心とした統計を教育された者(あるいは単に聞きかじった者)から「ランダムサンプリングでないからこの結果は信用ならない」という批判をもらうと、終わりのない論争に突入する。……両者のうちどちらが正しいか、と言われれば、それは単に学問的な視座の違いによるというだけの話であり、状況によって適した考え方はどちらなのかきちんと考えられることが重要なのである。》(pp.211-213)

[目次]
第1章 なぜ統計学が最強の学問なのか?
 統計リテラシーのない者がカモられる時代がやってきた
 統計学は最善最速の正解を出す
 すべての学問は統計学のもとに
 ITと統計学の素晴らしき結婚

第2章 サンプリングが情報コストを激減させる
 統計家が見たビッグデータ狂想曲
 部分が全体に勝る時
 1%の精度に数千万円をかけるべきか?

第3章 誤差と因果関係が統計学のキモである
 ナイチンゲール的統計の限界
 世間にあふれる因果関係を考えない統計解析
 「60億円儲かる裏ワザ」のレポート
 p値5%以下を目指せ!
 そもそも、どんなデータを解析すべきか?
 「因果関係の向き」という大問題

第4章 「ランダム化」という最強の武器
 ミルクが先か、紅茶が先か
 ランダム化比較実験が社会科学を可能にした
 「ミシンを2台買ったら1割引き」で売上は上がるのか?
 ランダム化の3つの限界

第5章 ランダム化ができなかったらどうするか?
 疫学の進歩が証明したタバコのリスク
 「平凡への回帰」を分析する回帰分析
 天才フィッシャーのもう1つの偉業
 統計学の理解が劇的に進む1枚の表
 重回帰分析とロジスティック回帰
 統計学者が極めた因果の推論

第6章 統計家たちの仁義なき戦い
 社会調査法vs疫学・生物統計学
 「IQ」を生み出した心理統計学
 マーケティングの現場で生まれたデータマイニング
 言葉を分析するテキストマイニング
 「演繹」の計量経済学と「帰納」の統計学
 ベイズ派と頻度論派の確率をめぐる対立

終 章 巨人の肩に立つ方法
 「最善の答え」を探せ
 エビデンスを探してみよう

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2013.03.15

▽不適材不適所の記録――『カウントダウン・メルトダウン』

船橋洋一『カウントダウン・メルトダウン 上』(文藝春秋)

船橋洋一『カウントダウン・メルトダウン 下』(文藝春秋)

福島原発の事故を扱ったノンフィクションも、これまでにいくつか出版されており、本書も、その一冊。

内容的にも類書とかぶる部分も多く、特段、本書によって新事実が掘り起こされた、というわけではない。

しかし、福島原発事故に対処した政治家や役人の胸の内を多く引き出しており、官邸を中心とした人間模様が克明に描かれている。

思わず、不適材不適所というフレーズが浮かんでしまった。

[上 目次]
全交流電源喪失
保安院検査官はなぜ逃げたか
原子力緊急事態宣言
ベント
1号機水素爆発
住民避難
危機の霧
3号機水素爆発
運命の日
対策統合本部
自衛隊という「最後の砦」
放水

[下 目次]
トモダチ作戦
海軍vs国務省
ヨコスカ・ショック
ホソノ・プロセス
最悪のシナリオ
キリン登場
SPEEDIは動いているか
飯舘村異変
計画的避難区域
落城一日
神の御加護

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2013.03.14

▽『兵士は起つ: 自衛隊史上最大の作戦』

杉山隆男『兵士は起つ: 自衛隊史上最大の作戦』(新潮社)

《携帯はもとより、その後もメール、ツイッターと、人と人がつながる方法はここ十年ほどのうちに飛躍的に増え、蜘蛛の巣ように細かく張りめぐらされた情報のネットワークの中を虚実とりまぜたさまざまな話が日々飛び交っているというのに、いまも昔も自衛隊員は、行ったのかどうかさえ、もっとも大切な人にわからないように行ってしまうのだ。》(p.183)

杉山隆男の「兵士に聞け」シリーズの最新作で、東日本大震災と福島原発事故に関わった「兵士」たちを取り上げている。

自衛隊にとっても、史上最大の「実戦」だったこともあり、これまで以上にリアルかつ重い内容となっている。

[目次]
第1部 千年に一度の日
 水の壁
 別名なくば
 救出
 最後の奉公
 白いリボン
 長く重たい一日

第2部 七十二時間
 戦場
 「ご遺体」
 落涙
 母である自衛官

第3部 原発対処部隊
 正しくこわがった男たち
 偵察用防護衣
 海水投下
 四千八百リットル

エピローグ
 日記

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2013.03.12

▽『金融緩和で日本は破綻する』

野口悠紀雄『金融緩和で日本は破綻する』(ダイヤモンド社)

《現在の状況が進み、日銀の国債購入が進んでいった場合に何が起こるかは、誰にも予測できない。これは海図なき航海だ。海図がないのは、日銀だけでない。日本経済全体が、大きなリスクを抱えるに至っている。》(p.106)

[目次]
はじめに

第1章 金融政策はどう行なわれるか

1 「マネー」とは何か
現代の経済では預金が「マネー」/「マネーストック」とは/「マネタリーベース」とは

2 金融政策で経済活動をコントロールできるか?
マネタリーベースの操作/信用創造によって預金が増える/金融政策が実体経済を動かすメカニズム/実際には、金融政策は経済活動に影響を与えなかった

3 「ヘリコプターマネー」をめぐる誤解
日銀はヘリコプターから紙幣をばら撒けない/ヘリコプターマネー作戦は、日銀券増刷なしで実行できる/ヘリコプターマネー作戦が機能しない場合もある

4 日本の金融政策の変遷
公定歩合操作から公開市場操作へ/ゼロ金利政策/量的緩和政策/リーマンショック後の金融政策

5 基金創設による国債購入
資産買入基金の創設/新しい金融政策が必要になった理由は、国債発行の急増/強まる金融緩和への圧力/日銀の国債購入で、財政問題は解決するか?

【補論1】マネーストックのいくつかの定義
【補論2】「マネー」「通貨」「貨幣」は同じものか?
【補論3】信用創造のメカニズム
【補論4】さまざまな操作によるマネタリーベースとマネーストックの変化

第2章 効果がなかった量的緩和

1 マネーストックもGDPも増えず、物価も上昇せず
マネタリーベースは増えたが、マネーストックは増えず/マネーストックを政策で動かせない/日本の状況は、「流動性トラップ」とは違う

2 インフレターゲット論者も「量的緩和は効果なし」
「日本の量的緩和策は効果がなかった」/日本で量的緩和が効果がなかったことをクルーグマンも認める/クルーグマンの動態的流動性トラップ論/クルーグマンの提言は、実際的な政策とはなりえない

第3章 大規模為替介入と円安バブル

1 2003年の大規模介入で円安に
開放経済での金融政策は、為替レートを変化させる/日米金利差と円ドルレートの強い相関/35兆円超の大規模介入/量的緩和は、円安を通じて実体経済に影響を与えた/量的緩和の本当の目的は何だったのか?

2 不胎化か非不胎化か?
「不胎化」介入、「非不胎化」介入とは/大規模介入のファイナンス⑴ 日銀/大規模介入のファイナンス⑵ 銀行:短期国債と日銀当座預金の増

3 円安が進行し、輸入物価が上昇
量的緩和は輸入物価を引き上げた/消費者物価の変動は、輸入物価の変動の20分の1程度/2%の物価目標は到底実現できない

第4章 日銀による財政赤字のファイナンス

1 金融緩和の真の目的は国債購入
物価目標は「目くらまし」/量的緩和による国債残高の変化/新規国債発行が30兆円を超えると日銀が購入

2 基金方式で本格的な国債購入に乗り出す
2010年から再び国債購入/日銀券ルールからの逸脱は重要な問題か?/国債購入をいくらでも増やせるか?

3 長期金利の低下と「時間軸効果」
長期金利が異常に低下した/時間軸効果:緩和継続はなぜ長期金利を押し下げるか/日本の量的緩和はイールドカーブを押し下げた/「時間軸効果」は、中間目標にすぎない/長期金利低下は、国債購入の直接の結果

4 財政規律の弛緩は深刻
日銀の国債購入を評価する基準/財政規律を維持できるか/「貨幣化」によって財政規律は弛緩する

第5章 金融緩和でデフレ脱却はできない

1 新興国工業化が物価下落の原因
工業製品価格が下落し、サービス価格は上昇/テレビやカメラなどの顕著な価格低下/消費者物価は、需要の急減で上昇し、需要の急増で下落した

2 政府の料金政策がサービス価格低下の原因
2009年以降、サービス価格が低下/高校無償化は、サービス価格動向に大きな影響/公営家賃、運輸通信、医療福祉も大きく影響

3 常識的デフレ論の誤り
二部門を区別する必要がある/新興国工業化の影響⑴ 工業製品価格の下落と製造業利益率の低下/新興国工業化の影響⑵ 雇用が製造業からサービス産業へ/「デフレからの脱却」でなく、「所得低下からの脱却」が必要

4 アメリカがデフレに落ち込まないのはなぜか?
新興国原因論に対してなされる反論/アメリカの物価上昇は、サービスとエネルギーによる/アメリカのサービス価格上昇の原因は家賃

5 インフレターゲットの目的は物価抑制
各国のインフレターゲット/ルールか裁量か

第6章 世界を混乱させるアメリカ金融緩和QE

1 量的緩和策QE1で雇用は増えず
2008年金融危機で公的資金注入/QE1(量的緩和第一弾)でMBSの価格崩壊を防止/金融機関は回復したが、雇用は改善せず

2 QE2も実体経済に影響なし
QE2(量的緩和第二弾)で国債利回りは上昇/QE1もQE2もマネーストックを増加させず/QE2もアメリカ実体経済に影響を与えず/量的緩和の効果は、金融資産の価格下支え/新興国バブルは生じなかった

3 何のためのQE3? 
QE3は何の効果もなく、世界経済を混乱させる/アメリカの企業利益は伸びている/アメリカで伸びないのは賃金所得/政策手段割り当ての誤り

第7章 金融緩和のエンドレスゲームに突入する世界

1 金融緩和は為替レートに影響
QEは実体経済には影響しなかった/QEは為替レートに影響

2 アメリカQEがユーロ危機の原因
国際的な資金の流れの変化を三期に分けて考える/金融危機でアメリカから流出した資金は、南欧国債に回った/原油、金、新興国株式にも資金が回った/QE2がソブリン危機の引き金を引いた/金利変化は原因でもあり結果でもある

3 金融緩和のエンドレスゲームに突入する世界
2012年9月、日米欧が金融緩和/金融緩和と為替レート減価のエンドレスゲーム

第8章 金利高騰は大問題

1 不安定化する国債市場
国債バブルと札割れ/外国人保有比率の上昇/銀行収益の4分の1が国債売却益

2 国債バブル崩壊なら銀行に巨額損失
1%の金利上昇で、大手行に3.5兆円の損失/国債バブル崩壊で、金融機関の純利益が吹き飛ぶ/大手行はなぜ残存期間の短縮化を図っているか

3 金利高騰で財政破綻するか?
財政放漫化は不可逆過程/日本はイタリアと同じ道を歩む?/金利上昇による財政破綻はあるか?/重要なのは単年度収支でなく債務の「残高」

【補論】デュレーションを用いた利回りの変化と価格変化の計算

第9章 財政赤字と金融緩和で国家は破綻する

1 国家は破綻する──ラインハートとロゴフの警告
国家破綻はよくあること/金融危機は通貨安とインフレをもたらす/負債のスーパーサイクルからエンドゲームへ/民間の負債が増え、それが政府の負債になったのはなぜか/インフレは不可避か?/日本は押しつぶされた虫か?

2 日銀引き受け国債発行はインフレをもたらす
日銀引き受けのメカニズム/政府は無限の財源を獲得し、インフレが起きる/家計が「インフレ税」の負担を負う/政府紙幣は日銀引き受け国債と同じ/歴史的に見ると、財政赤字はインフレを起こす/復金債の日銀引き受けが招いたインフレーション/金融緩和は国際的な資本移動を引き起こす/インフレが起きるのは財政支出がなされるから

3 海図なき航海に出る日本経済
強まる金融緩和要求/財政規律はさらに弛緩する/恐ろしいのは、資本逃避による急激な円安とインフレ

【補論】国債日銀引き受けのメカニズム

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2013.03.10

▽大鹿靖明『メルトダウン』文庫版――福島第一原発事故ドキュメントの増補・改訂版

大鹿靖明『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』(講談社文庫)

2012年2月に刊行された大鹿靖明の『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』を増補・改訂した文庫版が改めて発売された。

文庫版では、東電の再建スキーム、日本各地の原発再稼働、電力自由化の背後にうごめく経産省の影が、より克明に描かれている。

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▽パナソニック・ショック

立石泰則『パナソニック・ショック』(文藝春秋)

《その後も技術系のOBに話を聞いたが、象徴的だったのは「これ(特別ライフプラン)が、松下の技術に止めを刺すことになるだろう」という見方をする人が少なくなかったことである。》(p.172)

現在も苦境に陥っているパナソニック――。

その転落の元凶はなにかを探るために、松下電器工業の繁栄から、パナソニックの転落までを、通史的に描いたものである。

「松下の技術に止めを刺すことになる」と指摘された「特別ライフプラン」とは、2001年に松下本社やグループ企業4社を対象にした早期退職制度で、実に1万3000人もの応募があったという。

その後も、プラズマテレビへの過大投資など、パナソニックの迷走は続き、現在にいたる。再生の手がかりはいまで見えてこない。

[目次]
第1章 私と松下幸之助
第2章 幸之助と松下電器
第3章 中興の祖山下俊彦
第4章 戦略的な経営
第5章 創業者なき経営
第6章 破壊の時代
第7章 パナソニック再建のために

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2013.03.09

▽『10・8』――巨人VS.中日 史上最高の決戦

鷲田康『10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦』(文藝春秋)

「10・8」――。

中日ファンならば身悶えしながら思い出すあの日――。

中日と巨人が同率で首位を迎えた1994年10月8日、セ・リーグ優勝は、この日の最終戦の勝者のものとなる。

プロ野球中継史上の最高視聴率48.8%(平均)を記録したほど、日本中の関心は高かった。

この死闘を戦った中日と巨人の選手のインタビューをもとに、試合を再構成した秀逸なノンフィクションである。

おぼろげな試合の記憶が、もう一度鮮明になるだけでなく、さまざまな「なぜ」も解き明かされていく――。

[目次]
序章 国民的行事の前夜
1回  長嶋茂雄の伝説
2回  落合博満の覚悟
3回  今中慎二の動揺
4回  高木守道の決断
5回  松井秀喜の原点
6回  斎藤雅樹の意地
7回  桑田真澄の落涙
8回  立浪和義の悔恨
9回  長嶋茂雄の約束
終章 「10・8」後の人生

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2013.03.08

▽政府はこうして国民を騙す

長谷川幸洋『政府はこうして国民を騙す』(現代ビジネスブック)

本書は、ジャーナリストの長谷川幸洋が、2011年から2012年にかけて「現代ビジネス」に連載した時事コラムを再構成したもの。

2011年3月の福島原発事故から、2012年12月の安倍政権樹立までのトピックが取り上げられており、もっぱらその視線は民主党政権を裏から操ってきた官僚機構に向けられている。

[目次]
第1章 情報操作は日常的に行われている
1 資源エネルギー庁長官が「オフレコ」で漏らした本音
2 「オフレコ破り」と抗議してきた経産省の「脅しの手口」
3 今度は東京新聞記者を「出入り禁止」に! 呆れ果てる経産省の「醜態」
4 取材から逃げ回る経産省広報と本当のことを書かない記者
5 事実を隠蔽する経産官僚の体質は「原発問題」と同根である
6 辞任した鉢呂経産大臣の「放射能失言」を検証する
7 「指揮権発動」の背景には何があったのか 小川敏夫前法相を直撃
8「陸山怪事件でっち上げ捜査報告書」を書いたのは本当は誰なのか
7 「捜査報告書問題」のデタラメ処分にみる法務・検察の深い闇

第2章 政府は平気で嘘をつく
1 経産省幹部が封印した幻の「東京電力解体案」
2 東電の資産査定を経産官僚に仕切らせていいのか
3 賠償負担を国民につけ回す「東電リストラ策」の大いなるまやかし
4 お手盛りの「東電救済」 政府はここまでやる
5 国民には増税を押しつけ、東電は税金で支援。これを許していいのか
6 資金返済に125年! 国民を馬鹿にした政府の「東電救済策」
7 不真面目極まりない枝野経産相の国会答弁
8 「東電国有化」のウラで何が画策されているか
9 原子力ムラの「言い分」を鵜呑みにしてはいけない
10 大飯原発再稼働 政治と官僚の迷走ここに極まれり
11 様変わりした抗議行動 反原発集会で感じた新しい動き
12 野田政権が決めた「原発ゼロ」方針は国民を欺く情報操作である
13 東電のギブアップ宣言

第3章 迷走する政治、思考停止したメディア、跋扈する官僚
1 いい加減、財務省べったりの「予算案報道」はやめたらどうか
2 増税まっしぐら! 財務省の「メディア圧力」
3 日銀のインフレ目標導入でメディアの無知が露呈した
4 官僚たちがやりたい放題! 野田政権野田政権「日本再生戦略」には幻滅した
5 増税に賛成したメディアは自らの不明を恥じるべきだ
6 もはや用済みの野田首相が財務省にポイ捨てされる日
7 年内解散を的中させた私の思考法を公開する
8 安倍自民党総裁の発言を歪めたメディアの大罪

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2013.03.07

▽「祝井十吾」の事件簿――大阪府警暴力団担当刑事

森功『大阪府警暴力団担当刑事 「祝井十吾」の事件簿』(講談社)

本書は、ジャーナリストの森功が、複数の大阪府警暴力団担当刑事から得た証言をもとに、大阪で起きた、あんな事件や、こんな事件の真相を描いたものである。

「祝井十吾」とは、大阪で活躍する刑事たちを総称した仮名である。

[目次]
プロローグ

第一章 島田紳助引退の舞台裏
・本気のガサ入れ現場
・記者会見の嘘
・全否定からの方向転換
・どっぷり浸かった渡辺二郎
・メールを流出させた狙い
・黒い交際の原点

第二章 新山口組壊滅作戦
・ナンバーツー逮捕の波紋
・被害者の告白
・懐に忍ばせた拳銃
・謎のヒットマン部隊
・“ボディガード兼闇の始末人”

第三章 吉本興業の深い闇
・還暦パーティに集まった面々
・神戸芸能社の役割
・“田岡七人衆”だった吉本興業会長
・女太閤の血を引く林マサ
・カウスとたけしのスポンサー
・中田カウス騒動の真相
・紳助引退との因果関係

第四章 漆黒のボクシング興行史
・ 相撲部屋と同じシステム
・「売り興行」と「手打ち興行」
・「ほら、切符来たよ」
・亀田家トラブルの深層
・借金した相手は山口組大幹部
・暴力団が観戦した理由
・東京ドームこけら落としの舞台裏
・山口組だらけのリングサイド

第五章 ヤクザと銀行
・“汚れ役”が語る脱税の手口
・マネロンに使われる無記名口座
・同和と銀行
・幽霊相手の転貸融資
・事件化できたヒント
・捜査の幕引き
・セコムの株取引

第六章 梁山泊事件
・島田紳助の株取引
・ベンチャー起業家と裏社会の交差点
・投資指南役は京大ゼミ研究員
・黒いスリーショット写真の意味
・豊臣春國の告白
・知られざる裏のネットワーク

第七章 ヤクザの懐
・保釈金の帯封を洗え
・裏ネットワーク解明のヒント
・武闘派の経済ヤクザ
・空港開発の莫大な利益
・大幹部で年収六百万円
・六代目体制固めの影響

第八章 捜査刑事の落とし穴
・猫の死骸捜査
・取調室の録音
・ベテラン刑事の取り調べ術
・不良警官

終章 山口組捜査の行方
・論告求刑の筋書き
・マル暴刑事の疑問
・点と線の捜査
・懲りない面々

エピローグ

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2013.02.10

▽『メイド イン ジャパン』――驕りの代償

井上久男『メイド イン ジャパン 驕りの代償』(NHK出版)

経済ジャーナリストの井上久男が、かつて「メイドインジャパン」を誇った日本の製造業が、いかに凋落していったかを掘り下げたのが本書である。

気に入らない記事があるとマスコミに圧力をかけたパナソニック、液晶テレビへの過剰投資に走ったシャープ、ストリンガー時代に迷走を続けたソニー、そして、リーマンショック直前まで新規工場をつくり続けたトヨタ。

いずれの会社も、経営者の「驕り」ともいえる暴走がつまづきの原因となっている。

これらの会社は、最近の円安傾向で、業績的には若干、息を吹き返しつつあるものの、それでも著者の指摘は鋭く重い、といえるだろう。

[目次]
第1章 パナソニック・ショック
第2章 存亡の危機シャープ
第3章 日産自動車再生の教訓
第4章 ソニー、パナソニック、シャープ新社長の実力
第5章 エンジニア流出
第6章 トヨタの栄枯盛衰
第7章 日本企業の課題―失われた20年を取り戻せるか

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2013.01.20

▽幸せだったかな――『ビートたけし伝』

井上雅義『幸せだったかな ビートたけし伝』(白夜書房)

浅草での修業時代のビートたけしを描いた伝記。

著者の井上義は、たけしに一年半ほど遅れて浅草で、芸人修行を始め、後に週刊誌のライターとして、ビートたけしに関わってきた。

ヒット曲「浅草キッド」の冒頭に出てくる「おまえ」は、ブレイクしたツービートの相方ではなく、その前にコンビを組んでいた相方と言われている。その相方と組んだコンビ「リズムフレンド」の漫才が、後の毒舌漫才の原型と思われる。

ビートたけしの知られざる一面に触れた、貴重な伝記である。

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▽安倍と麻生と竹中と――『小泉の勝利 メディアの敗北』

上杉隆『小泉の勝利 メディアの敗北』(草思社)

第二次安倍政権が発足して、そろそろ一ヶ月がたとうとしています。

第一次政権と同じように、小泉・竹中構造改革路線をふたたび継承するのか、それとも、安倍の総裁選勝利に貢献した麻生太郎副総理・財務大臣の公共投資重視の小泉以前の自民党政治に戻るのか、まだ、見極めがつかない状況にあるといえます。

さて、その第一次安倍政権を生み出したのは、5年半続いた小泉政権だったわけですが、その時のさまざまな人間模様を描き出したのが、上杉隆の『小泉の勝利 メディアの敗北』です。

上杉隆が小泉の時代に書いた二十数本の記事を、自分自身で検証するという試みで、2006年に刊行されました。

記事が書かれた背景説明→記事本文→記事の検証、という構成は、やや読みにくい部分もありますが、小泉時代の背景や報道、さらに、政治家同士の人間関係の綾を理解する上で、有益な情報をもたらしてくれます。

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2013.01.19

▽音楽を絵にする仕事――『ザ・ベストテン』の作り方

三原康博『『ザ・ベストテン』の作り方』(双葉社)

《三原康博は、セットをデザインするうえで「ボケとツッコミ」のような要素を意識していたこと、その「両方が必要」であったことを述懐する。……歌手や楽曲の世界観を空間化して見えるかたちにする際、その世界観に寄り添った“順接するデザイン”だけでなく、あえて対立する“逆接するデザイン”を採用することで、他の音楽番組や映像表現では見られない、『ザ・ベストテン』に独自の「音楽を見る」空間を創出し、その体験を視聴者へ提供していたのである。》(p.247)

本書は、1978年から1989年までTBSで放映された音楽番組『ザ・ベストテン』の、そのセットをデザインした三原康博に、当時を振り返ってもらうという企画である。

実際に放映されたセットの写真や、そのもとになったデザイン画・模型の写真とともに演出意図が語られている。記憶に残ってるデザインも多々あり、なかなか見応え、読み応えのある一冊である。

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