イギリスの固定電話オペレーター、英BTグループ(BT Group Plc.)は、6月15日より、携帯電話と固定電話を統合したFMC(Fixed Mobile Convergence)サービス"BT Fusion"(BTフュージョン)の試験運用を開始した。現在は、400人の限定されたユーザーしか利用できないが、9月からは、一般向けサービスも正式にスタートする。同社のめざすFMCとはどのようなものなのか、英BTグループのライアン・ジャービス(Ryan Jarvis)モバイル・プロダクツ・アンド・パートナーシップス担当ディレクターに話を伺った。
BT Fusionの概念図(英BTのプレゼンテーション資料より)。屋外では、携帯電話回線網を利用する。家庭には、ブロードバンド回線に接続された専用のハブ"BT Hub"が設置されており、携帯電話はブロードバンド回線を利用したIP電話として使用される。携帯電話とBT Hub間は、Bluetoothによって通信が行われる。BT Hubは無線LAN(IEEE 802.11 b/g)としても使用可能で、2005年からは、携帯電話とBT Hub間も無線LANによる通信が可能となる。
英BTグループのライアン・ジャービス(Ryan Jarvis)モバイル・プロダクツ・アンド・パートナーシップス担当ディレクター。FMCA(Fixed-Mobile Convergence Alliance)の会長も務める
■なぜFMCを始めたのか?
――なぜ、今この時期に、英BTグループは、FMCサービス(BT Fusion)を始めることになったのか?
ジャービス「それには、2つの理由があります。1つは、カスタマーのニーズ。そして、もう1つは、技術的な面です。まず、1つ目のカスタマーのニーズについてですが、これは今に始まったことではありません。これまでもカスタマーは、携帯電話と固定電話が別れてていることに不満を感じていました。料金が別々というのも不満の1つと言えます。イギリスでは、携帯電話の通話の30%は、家からかけているというデータもあります。固定電話の低価格・高品質な通話と、携帯電話の利便性を融合しようというのがBT Fusionの狙いです」
BT Fusionの通話料金(英BTのプレゼンテーション資料より)。携帯電話で英国内の固定電話にかけた際の料金。BT Fusionでは、オフ・ピークタイム(一番上の行)では5分5.5ペンス=11円から、ピークタイム(上から2行目)でも5分15ペンス=30円から、と他の携帯電話を利用する際よりも割安になる。BT Fusionの契約は、基本通話時間が月100分通話のBT Fusion 100が月額9.99ポンド=2000円、基本通話時間が月200分のBT Fusion 200が月額14.99ポンド=3000円。対応携帯電話とBT Hubは、無料で提供される。ただし、BT Fusionを利用するには、このほかにBTの固定電話(月額10.50ポンド=2100円から)と、BT ブロードバンド・サービス(月額17.99ポンド=3600円から)を契約している必要がある。
ジャービス「2つ目の技術的な側面ですが、ここにきてようやくFMCを始める技術的な条件が整ったからです。BT Fusionでは、携帯電話とBT Hubの間の通信に、UMA(Unlicensed Mobile Access)という技術仕様を採用していますが、この仕様の標準化が進んできました。また、モトローラやノキア、サムスンなどの携帯電話メーカーとの協業も進んできたこともあります」
BT Fusion対応端末の米モトローラ製『V560』。このモデルは、携帯電話とBT Hub間を、Bluetoothで通信する。屋外で100m、屋内では25mまで通信可能という。また、2006年に発売される機種からは、無線LAN(IEEE 802.11 b/g)による通信へと変更される予定。
――なぜ、最初の機種『V560』は、Bluetoothを採用しているのか。
ジャービス「なぜかと言えば、無線LAN対応機種の登場を待つ必要は無い、と判断したからです。BT Hubは、Bluetoothと無線LANのいずれにも対応しています。そして、カスタマーにとっては、通信技術がBluetoothなのか無線LANなのかは、あまり関係のないことだと思います」
ジャービス「また、現時点では、無線LANに対応した携帯電話は、高価格機種に限られています。さらに、無線LAN使用時のバッテリーの持ち時間も、あまり長くありません。こうした問題点は、来年までには解決されると思います。ですから、当面はBluetoothを使い、来年発売される機種からは無線LANを利用する予定です」
■高い音声品質が好評
――現在、試験的に利用している400人のカスタマーの反応は?
ジャービス「非常にいい反応を得ています。特に、携帯電話回線網から、ブロードバンド回線網へとシームレス移行した際に、音声が、よりクリアーになるという感想が多いです。また、BT Hubの利用可能範囲も十分、との評価をえています」
――不満の声はありますか?
ジャービス「利用者を400人に限定し、十分なサポート体制を構築した上での試験運用ですので、いまのところ不満の声は、ありませんね」
――9月からの本格的なサービス開始に向けて、一般の人の反応は?
ジャービス「まだ、ニュース・リリースを出したでけで、一般カスタマー向けの宣伝はしていません。しかし、6月の発表以後、BTのウェブサイトで事前登録者を募集していますが、7月末時点で1万5000人が登録しています」
――加入者数は、どれくらいが目標ですか?
ジャービス「加入者数の目標は公表していません。ただ、5年後にBT Fusionの売上高が、10億ポンド(2000億円)という目標は掲げています」(筆者注:英BTグループの2005年3月期の総売上高は186億ポンドのため、総売上高の5%程度を目標にしていることになる)
■BT Fusionの未来像は?
――BTは、2001年に携帯電話回線網を売却したため、携帯電話は、英ボーダフォンのインフラをMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)として利用しています。FMCサービスを開始するに当たり、この点は、どのように影響していますか?
ジャービス「私が会長を務めるFMCA(Fixed-Mobile Convergence Alliance)の会員企業、たとえば日本のNTTやKDDI、アメリカのAT&Tなどは、グループで固定電話回線網と携帯電話回線網の両方を持っています。これらの企業は、グループ内で、固定電話と携帯電話のどちらを優先させるかといった点で綱引きをしている段階です。BTは、固定回線網しかありませんから、こういったことは気にしないでFMCを進めることができます」
――BT Fusionは、最終的には、どういうものになるのでしょうか?
ジャービス「BT Hubは1台につき6台のBT Fusion対応の携帯電話を登録できます。同時に通話できるのは3台ですが・・・。また、他人の家にあるBT Hubも利用できます。将来は、屋外でも、携帯電話回線網だけでなく、無線LANのホットスポットを使用できるようにする計画です。現在、BTグループは、英国内で"OPENZONE"という無線LANのホットスポットを7800カ所開設しており、この数をもっと増やす予定です。このホットスポットでも、BT Fusionのサービスが利用できるようになります。つまり、屋外でも、無線LANを介した通話ができることになります」
BT Fusionの将来の概念図(英BTのプレゼンテーション資料より)。将来は、BTが展開している無線LANのホット・スポット"OPENZONE"を通じて、BT Fusionが利用できるようにする。ホットスポットが無いところでは、携帯電話回線網を使用する
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